LIFE | ナノ


「でも、四君子様がこんなお若いだなんて…」
「まー表にはなかなか出ないからね」

 音雲の言葉に、優羽は苦笑い気味に答える。
 四君子は各都市の2番目の地位だ。しかし、表で活動しているのは都市のNo.1。つまり頂点である者。通称賢帝と呼ばれる人々が行っている。
 それの補佐を行うのが、四君子というわけである。その四君子は住民の前で名を名乗ることはめったになく、知っている人は知っている程度の知識。
 賢帝はお互いに会議等の時に顔を合わせるが、四君子はそのようなことがない。なので、四君子達はお互いが誰なのかも分からないのだ。

「けど、七座の彼は知ってたんだね」
「まあ、情報だけは手に入る都市にいますからね」
「ということはアレかな。スペードから?」
「そうですね。正確に言えばスペードの隣にある町、ウィンドから来ています」

 ウィンド…。ポツリと優羽が言葉をもらす。
 スペードの警備に貢献している町だったかな。
 スペードの影響が強いのか、ウィンドもかなりの安定した生活が送ることが出来るという話だ。

「彼女とは知り合いだったの?」
「……はい。幼少期に、一緒に過ごしたことがあります」
「へえ…」
「あともう一人いるんですけどね」
「そうなんだ」

 そっちの人とも会えるといいね。と優羽が言えば、水憐も優しげな笑みを浮かべた。

「それじゃあ。僕たちはこれで失礼します」
「うん。音雲ちゃんも、今度は幸せにね」
「ふふっ、ありがとうございます」

 2人と別れてから、優羽は腕時計を見る。
 やっべ、20分だ…。げんげん居なくなったかな。先行っちゃったか。
 優羽が少し残念に思いながら、さっきまで居た部屋を出れば…。

「うわあ!!」

 そこには源輝が立っていた。

「びっ、びびびビックリしたああ!! げんげんいつの間に…」
「流石に先行くのは気が引けてね。何かあったのかと思ったんだ」
「成程…」
「カンは当たったみただけどな」

 源輝が肩を竦めれば、優羽は申し訳ないと眉を下げる。

「遅くなってごめんねー。じゃあ、ホテル行こうか。案内する」
「助かる」

 慌てるように外に出れば、外はもう暗くなりかけていた。
 西日がダイアの都市を照らし、その風景はこの世のものとは思えないくらいに、幻想的な風景となっていた。この風景を見るために、この都市を訪れる人も少なくはない。
 源輝もその風景を目にし、思わず足を止めた。

「……綺麗だな」
「でしょ? 自慢な風景の一つだよ」
「あぁ。俺の方では無理だ」
「でも、そっちの方はまたクラシックな感じでいいじゃない。綺麗だと思うけどな」

 お互いの街、それぞれに良いところがある。違うところがあって当然だ。なければ全然面白くない。
 優羽の言葉に、源輝は足を止めたまま動こうとしなかった。

「げんげんどうかした?」
「……お前、四君子の菊だろ?」

 その単語を聞いて、優羽は驚きによって開いた口を、緩く笑みにへと変えた。

「そうだよ? ビックリした?」

 それがどうかしたの?
 優羽は笑みを浮かべながら、そっと腰元に手を動かす。

「まあ、お前みたいなものでもNo.2になれるんだなって」
「ひっどいなあ!」

 冗談だ。と笑う源輝。その様子が軽く気に入らなかったらしい、優羽は軽くふてくされた。

「まぁ俺は表で活躍する立場じゃないし。表の政治は大帝様の仕事だから」
「お前は普段何をしてるんだよ」
「んー、街の様子見とか。大道芸人としてやってるのは、いろいろな情報が入ってくるからなんだよ」

 会話をしながら歩いていけば、直ぐにホテルにたどり着いた。

「ほら、ここだよ。このホテル、食事も美味しいから期待してなよ」
「あぁ、そうしておく。今日は助かった、ありがとう」

 源輝は手につけていた手袋を外し、手をさし伸ばしてくる。優羽は一瞬驚いたが、直ぐに笑みを浮かべ同じように手を差し出した。

「こちらこそ。楽しかったよ。また会えるといいね」
「会えるさ」

 会えるという言葉の次に、何か源輝が呟いたようだが、優羽には聞こえなかった。

「じゃあね! 明日もまたダイアを楽しんでいってよ!」
「あぁ」






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