暗い青色のカーテン越しから朝の日差しが燦々と降り注がれる。そのカーテンの色の効果なのか、部屋の中は寒げな雰囲気を醸し出している。この街の住人たちには欠かせない鳥の鳴き声。どれもこれも平和な休日の1ページでしかない。だけどこの部屋の持ち主にとっては安らかに睡眠を摂っていたのにも関わらず、けたたましく鳴り響いた丸い時計によって妨害されたのであった。
「……うるせぇ」
眉間に皺を寄せた少年は寝返りをうち、枕元で体は小さく震えているのに馬鹿でかい音を発している時計につい殺気が沸いてしまう。
静かな動作でそれを掴み上げ、頂上にある制止ボタンをカチッと押す。途端それはびっくりするほど静かになった。
目覚まし時計とはそういう物である。
少年にとっては魔物みたいな存在の目覚まし時計を元の位置に戻し、薄らと瞼を持ち上げて暫く焦点が定まらない瞳でそのままぼーっとしてみる。しぱしぱと瞬きを数回行い、のっそりと上半身を上げると目を擦りながら時間を確認する為に魔物が立っている後ろを振り向いた。
「8時、20分…」
短針と長針が示している数字をぼそっと小さく呟き、ベッドの中で布団に包まれていた両足を外の床へと着地させる。
春とはいえ早朝は少し肌寒い。寝起き独特の怠い身体に鞭を打ってそのまま窓側まで歩行し、カーテンを開ける。
薄暗い所にいた少年はいきなりの慣れていない眩しい太陽の光に一瞬目を瞑ってしまった。そして直ぐに服を着替える。
着替えてる最中に、ふと目がとある方に向く。
先日、実がいなくなってから数日経ったときに、前に実から貰ったピアスが壊れたのだ。
結構デザイン的にも気に入っていたので、少し残念だった代物。何故急にと思っていたが、その時は実のことで手一杯だった。
新しいものでも買うか。そう思いながらテレビのチャンネルをつける。
「天気は、問題ねぇか」
テレビを見ていると同時に、別の音が聞こえた。
下の方から、結構騒がしい声が響いている。
客でも来たか…? しかし、こんな朝に来るだなんて珍しいな。そう思ったが、少し違う。客人だったら、ここまで騒がしくはないか。
ということは、誰かが帰ってきたか。
そう思ってカオルは下に向かって歩いた。階段を下りて少し歩けば、玄関につく。玄関を見れば、ブーツが1つ。
これは実が気に入って買ったブーツだ。ということは、実が久しぶりに帰ってきたということ。
全く、連絡もよこさずに、心配かけさせやがって。
死んでも言わないが。そう思いながら、まずはと台所に向かった。
そのあとすぐに、彼は驚きの体験をするのだが、その理由はまだまだ知らない。