新学期になって、また皆と同じクラスになったことに喜びを感じつつ、今日からお世話になる教室の扉を開けた。
 おはよう。今年もよろしくね。去年2組だったんだー。など色々な挨拶が飛び交う中、私はあっちゃんに目掛けて声をかけた。

「あっちゃんおはよう! 今年もよろしくね!」
「私こそ。今年もよろしくお願いします」

 お互いぺこりと頭を下げて、えへへと笑みがこぼれた。
 そうだ。ゆう君とげん君も同じクラスだったはず。彼らはどこに…。そう思って見渡せばすぐに見つけた。彼らは自分の席に座っているが…。周りの明るい春の雰囲気だというのに、彼らの空気はおかしい。
 どうしてそんなにどす黒いんだ。
 ゆう君あっちゃんと同じクラスだーって喜んでたじゃん。なんでなの。なんでそんな、今日地球が滅びますみたいな顔してるの。
 げん君も眉間のしわ数割増だよ。どうしたのシワはもう手術して取るしかないんじゃない?

「えっと、ふ、二人共どうしたの?」

 あたしが勇気を振り絞って声をかければ、彼等はまるで死んだ魚のような表情をしている。

「……ゆっきー…俺、もうダメかもしれない」
「え、なにそのジョーク」
「ジョークじゃない…。俺ももう辛い」
「げん君も何があったの…」

 いつもの二人は一体どこへ……。あっちゃんも心配してるよ…。

「……俺とげんげんには妹ちゃんがいるって、知ってるよね?」
「え? うん。二人共同い年なんでしょ?」
「あぁ…。俺たち以上に仲が良いんだが…」

 あ、俺たち以上って、げん君自分たちは仲がいいって思ってるんだ。
 二人は顔を見合わせて頷き、ゆう君が口を開いた。

「その二人が付き合うんだって…!!」
「……え?」

 思わずあっちゃんと拍子抜けした。
 二人はこの世の終わりだという顔になる。

「うううう嘘だといって、嘘だといって…!」
「アイツ等がそうなったらコイツが義弟とかマジふざけんな」
「違うよげんげんの方が誕生日あとだから俺が義兄さんだし」
「はあ? ふざけんなお前の義弟になってたまるか」

 当初の問題からズレてるよ二人共。ちょっと落ち着いて。
 あたしが落ち着くように言ってる時、あっちゃんはなにか思いついたようで、そっと口を開く。

「……お二人共、今日は何月何日ですか?」
「え? 4月1日だけど……」
「あ」

 二人揃えて間抜け面だ。げん君の眉間のしわも元通り…。うん、元通りの数になったって意味で消えたって意味ではないんだよね。悲しいことにね。
 そう、今日は4月1日エイプリルフール。嘘をついても許される日。ただし、その嘘はお昼になったらネタばらしをするというルールがあるらしい。まぁ、本当かどうかなんて分からないけれど。

 そのことを思い出したらしい二人は安堵の表情だ。そこまで嫌だったのか…。シスコンも兼ね備えているんだろう。まったく困ったものだ。

「あああ良かった…。妹ちゃんが未知の道に進むのかと…」
「ビックリした…」

 彼らの引っ掛かり用には、妹ちゃん達も大満足であろう。

「そっか、エイプリルフールか…。げんげんなんて大っ嫌いだよー」
「そうか奇遇だな俺もだ」
「……。ねえ嘘だからね!? 今の俺の嘘だからね!? げんげん嘘だよね!? 嘘だといって!!」

 ゆう君がげん君の襟をつかみながら激しく揺さぶる。
 あぁ、眉間のシワ減ったと思ったのにまた増えてしまった。

「ったく、午後にネタばらしすればいいんだろ」
「それまで待てない! 俺集中できない!」
「ふざけんな」

 ぎゃーぎゃーと騒いでいると、あっちゃんが思わずくすりと笑みを浮かべた。

「すみません。お二人のを見てたらつい…」

 そうだ、折角だし、あっちゃんもなにか嘘つけばいいのに。
 なんて、今ならどんなことも嘘だとわかるようなもんだし、バレバレか。意味ないかー…。

「俺はアリスちゃんに嘘つかないから」
「それ嘘?」
「嘘じゃないよ本当だよ!」

 これだけは信じてよー! 嘘だったら俺先生の前で全裸で逆立ちするからー!
 と叫んでるけどそれも本当なのか分からない。むむむ、エイプリルフールは中々疑心暗鬼にさせる日だな。

「そう、ですね…」
「ん?」

 あっちゃんはゆう君の方を向いた。ゆう君はどうしたのと首をかしげる。

「……私は西野さんが大ッ嫌いです」
「……それ、本当?」
「本当です」
「やばい俺心折れそう」

 ゆう君が机に突っ伏すと、あっちゃんがクスクスと笑い出す。

「あっちゃん今のはどっち?」
「さあどちらでしょう」

 昼にネタバラシしたら嘘ですよ。なんて軽くウインクしながら言うので、思わずこっちが笑顔になってしまう。
 ……そうだ。エイプリルフールと言ったら…。

「エイプリルフールについた嘘ってさ、この1年間実現されることがなくなるんだって」

 あたしが思いついたことを言えば、3人はお互いに目を合わせて顔を赤くした。
 
 あ、赤くなったってことは、全員嘘だったということかな?

 によによと笑ってみれば何笑ってんだとげん君にチョップされた。いたた…。
 だって、大ッ嫌いだというのが嘘だったら、その1年間嫌いになることなんてない、ということだもんね。
 
「あたしも皆大ッ嫌いだよ」
「嘘だと信じても怖いなあ…」
「まぁそれがエイプリルフールってやつなんだろうな」



*****


4月1日に高校って授業始まってたか記憶が曖昧すぎました。なかったらどうしよう…まぁこの学校はあったということで(笑)


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