「5回目…」
俺はノートに『正』の字を書いて、あるものを数えている。
それは…
コク…
「6回目!!」
「西野うっせえぞ」
「すんません!」
「…」
前の席に座る幼馴染みのげんげんのコクッとなる回数。まあつまり眠くてウトウトして、頑張ろうとしてるけど無理だ、という感じだよね。
げんげんは普段絶対に居眠りなんてしない。だって真面目だし、何事にも真剣だから。
なのに今日は…
コク…
「7回目!」
授業が始まってすぐにげんげんは居眠りをし始めた。
俺はげんげんが居眠りするのがあまりにも珍しかったので、授業よりもげんげんが気になって仕方ない。まあ前の席だから、どうしても目に入るからっていうのもある。
先生がいろいろ説明しているがそんなの頭に入ってこない。
コクッ
「8回目」
どんどん増えていく『正』の字。
ずるっと、げんげんの右腕が滑り、ノートが落ちる。それでもげんげんは起きない。どんだけ眠いんだ。げんげんの隣の席の子も困惑してるぞ。そしてノートが俺の近くに落ちたので、拾ってみる。そして中身を見てみると…。
ミミズのようなヒョロヒョロした線がいくつもあった。あと頑張ろうと書こうとして、結局書けなかったのであろう、俺の中では甲骨文字と呼んでいる、汚い文字があった。
「まさかげんげんのノートでこの線が見られるとは…」
俺は他にも居眠り特有のなにかがないか探し始める。
コクン…
「あっ!9回目!!」
「西野!次の問題解いてみろ!」
「…すんません。分かんねえっす…」
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