「兄貴どうしてくれんの!? 昨日のウチの録画枠、兄貴の所為で撮れなかったじゃん!」
「はあ? 俺が前から予約してたやつだろうが」
「お母さん達のテレビにって言ってたじゃん! おかげでウチのジャニーズ特番がー…」
「狸珀先輩、李奈先輩なに泣かしてんスか」
「狐紀黙れ」

 SBとは別に、委員会は集まることが多々ある。普通な委員会の仕事も然ることながら、放課後や昼間に仕事として集まることもある
 そんな今日は、昼間(昼食時)の放送をする為に、放送室に集まった感じだ。
 よく小学や中学にあるような感じではなく、ただの連絡係、それと昼食時に音楽を流す程度だが。
 けれど、この仕事は毎回早緑兄妹、狐紀、奏架が行っていた。

 ぶっちゃけると、各自一人ずつだと曲の偏りが回避できないからである。

「だから、今日の昼放送はジャニーズメドレーだ!」
「却下。一昨日もジャニーズだ。ここはABC48に決まってんだろ」
「真顔で言ってんな気持ち悪い!」

 普段は落ち着き冷静な早緑兄妹。しかし、この2人は各自好きなものへの傾向が似ており、さらにそれに関わればキャラが崩壊する。
 それを見慣れている狐紀と奏架は、軽くスルーを決めるばかりだ。

「じゃあここは間とってアニソンにしましょー」
「黙れ、潰すぞ」

 キャピッと狐紀がCDアルバムを手に取りながら言えば、狸珀が頭を掴む。ギチギチと頭を軋ませながら。
 いででででで! と狐紀が悲痛の叫びをあげていると、小さくため息を吐く人物。

「狐紀も少しは落ち着きなさいよ」
「奏架ー…」
「ここは普通に考えて、ベー●ーベンの『交響●第九番(第九)』よ」
「それCD一枚分!!」

 思わず狐紀が叫んだ。

 こうして見ると分かるように、この放送委員は各自好きなものがあり、熱を注いでいるものがある。
 簡単に言えばヲタクなのだ。

 狸珀はアイドルヲタク。李奈はジャニーズヲタク。狐紀はアニメ漫画ヲタク。奏架はクラシックヲタクだ。
 全員がそれぞれ趣味がバラバラなので、こうして毎回4人で放送委員の仕事を行っている。そうしないと、毎回曲が同じになってしまう。

 各自がそういう好きなものがあるので、お互いに理解はある。
 しかし、どうしても納得いかないものが、それぞれの本音。

「大体兄貴はさ! 交代制って言うのに、譲ってくれないじゃん!」
「お前が報告するのが遅いんだ!」
「学校で兄妹喧嘩しないでくださいよー…」

 もう、今日はアニソンメドレーで良いかな。良いよね。
 一人で悩んでいれば、ガラリと扉が開いた。

「すみません、リクエストボックスにCD入ってました」

 3人でどんちゃんしていれば、廊下に少し出ていた奏架がCDを手に持って呟いた。
 3人は奏架の方を見て、ピタリと動きを止める。

 この学校は、放送委員が自分たちで持ってきた音楽を流すのが主。生徒達も、何だかんだで色々な音楽が流れるので、ほとんど放送委員に任せている。けれど、実は放送室の前には、連絡を頼む箱の隣に、流して欲しいCDを入れる箱もある。
 今日は生徒の誰かがリクエストボックスに、CDを入れたようだった。

「あ、あー…。なら、仕方ねえな…」
「そ、そうね…」
「そうっスね」

 3人で、しょうがないと笑みを浮かべる。

「どうせアイドルだろうし」
「どうせジャニーズだろうし」
「どうせアニメだろうし」
「変なところで息を合わせないでもらえます?」

 3人で少し睨み合っていれば、奏架は小さくため息を吐いてから、CDトラックに入れて、放送開始ボタンを押そうとする。

「狐紀、今日の放送はアンタ担当でしょうが」
「あ、ごめーん!」

 狐紀がマイク前の椅子に急いで座り、奏架が今度こそボタンを押す。



******



『以上で連絡事項は終わりです』

「今日狐紀くんだったねー」
「お前、紅煉はあだ名で呼ばねえの?」

 昼食でいつもの4人が座って、食事をしていれば、放送の事で盛り上がる。

「え? じゃあコンコン?」
「それ狐だけだよね」

 相変わらずな雰囲気で話していれば、CDの音楽が流れる。

『えっと、今日はリクエストで…“2013年ヒットメドレー吹奏楽ver”をお届けします』

 そう言うと、直ぐに今年流行ったアニメから始まった。

「……誰がリクエストしたんだろうね」
「放送委員、毎回もめてるからな。逆に一つにまとまって、良いんじゃないか?」

 直ぐにアイドルの曲に変わり、そしてジャニーズに変わっていく。

「一つにまとめれば、何とかなるものですよ」
「……もしかしてあっちゃん?」
「はて、何のことやら」
 



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