お昼休み。それは学生にとっては至福のひと時である。
さっきまでのかったるい授業(因みに数学)が終われば、購買に向かう者もいれば、何人かと集まって昼食をとる人もいる。
「火燐ちゃん、屋上行かない?」
「彩兎」
1個上の学年である、彩兎が教室に顔を覗かせて声をかけてきた。そして教室に入ってきて、私の横に来る。
何か彩兎が、さっきの物理つまんなかったとかぼやいている。こいつ好きじゃない授業は寝てるって、焔真から聞いたんだよな…。
物理(私の学年だと生物)って、寝れないんだよね、普通は。だって瞬先生だし。あれは寝たら怖いでしょ。なのにこの人は平然と寝るものだから大したものだ。
まぁ話は戻して、屋上でお昼を食べないか、と言う事だよね?
「いいけどさ、あそこって生徒入れなくない?」
「ふふふっ。じゃーん、これなーんだ」
彩兎が見せてきたのは一つの鍵。
このタイミングで鍵を見せてくるということは…。
「まさか…」
「そう、屋上の鍵を複製したものです」
「まさかのっ!」
複製!?どうやったのさ!
私がそう叫べば、彩兎は「秘密。」と言って人差し指を口元に当てる。イケメンだから物凄い絵になってるね。うん、女子も少し興奮してるよ。少し怖い。
「まぁ兎に角行こうよ」
彩兎に腕を引っ張られ、思わず転けそうになるが、何とか踏みとどまって持ちこたえる。
こんにゃろう…!
そう思って彩兎の脇腹にチョップを入れるも、全く効かなかった。
暫くして、屋上に着き、彩兎が鍵を差し込む。ガチャリと音がして、ドアが開く。外の涼しい風が一気に流れ込んできて、風が頬を撫でる。
本当に開くとは思わなかった。
「うぉー!天気良い!」
「そうだねー、よし。お昼食べようか」
彩兎がそう言って座るので、私も腰を下ろして弁当の蓋を開ける。
「あれ、彩兎コンビニ?」
「ん?そうだよ。」
彩兎はそう言って、某コンビニのサンドイッチを黙々と食していた。お、美味しそう…。
って、そうじゃなくて。
「昨日も、一昨日もずーっとコンビニじゃん。流石に体に良くないんじゃない?」
「あー…それ草眞さんにも言われた…」
軽くショボンとしながら、彩兎が呟いた。結構素直じゃない彩兎だけど、彩兎は草眞さんに憧れているから、結構素直に言うことは聞く。あ、勿論私も尊敬してるけど。
彩兎が少し苦笑いを浮かべているけれど、何処か嬉しそうなのは、多分心配してもらえたからなんだろうな…。
私はそんな事を考えていれば、私は弁当の小さいパックの蓋を開けた。
「彩兎、これ上げるよ」
「ん?フルーツ?」
まぁ缶詰なんだけれども、パイナップルとか、桃とかが入っている。
私は結構ほかの人より食すからね。デザートも必要なのです。
「甘いものも食べたくなるでしょ」
「うん、ありがとう。頂きます」
彩兎はそう言って、串を刺してフルーツを食べていく。
私はそのあいだに弁当を食していれば、目の前に桃が出てきた。
「はい、あーん」
「はっ、えっ無理っ!」
「うわぁ、それ少し傷つくよ」
「あ、ごめん」
私は小さく謝り、その差し出された桃を一口で食べた。
「火燐ちゃん、一口大きいよね」
「知ってますー」
「あはは、ごめんって」
彩兎はそう言うと、食べ終えたのかパックの蓋を閉め、自分のバックに入れた。
そして、私の方をニコニコと笑みを浮かべながら見てくる。
「まぁ、そんな風に美味しそうに食べる火燐ちゃんが好きなんだけれどね」
思わず、箸で持ってたウィンナーを落とした。
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