すばらしい春の日のこと

 色々な学科を見て回って、次は体育科。どうやらここは、将来プロの道に進みたい、体育の先生になりたいなど、そういう系に進みたい人が選ぶそうだ。
 それで、ここでは体作りとかを主にしているらしい。あとは、そういう系の勉強も。
 今回見学していた時には、先輩達は授業で……。

「何やってるんですか、あれ…」
「プールの中で肺活量を高めるトレーニング」
「いや……深くね?」

 あたし達の前にデーンとある水槽。まるで水族館。いや、それより深いかもしれない…。皆でじっと見ていれば、数人が泳いでくるから、皆でびっくりして肩を揺らした。
 ふああ…。皆さん凄い綺麗に泳いでるよ…。男女一緒に泳ぐのか…。
 そうやって授業を見学していれば、隣に居たゆう君が顔を輝かせて見ていた。やっぱり、この学科に入りたいのだろうなあ…。

「あ、よお! 優羽に源輝!」

 急に呼ばれた声に、二人はそちらを振り向いた。ゆうくんは声の主が分かったみたいで、一瞬顔を輝かせる…が、直ぐに何とも言えぬ表情をした。
 そこには豪波先輩と、隣に居るのが…。

「げっ」
「げって何だよ西野ー。ひでえなあ」
「白夜さん…」
 
 あぁ、そうだ。虎臣白夜先輩だ。四天王の。
 そうか、あの人も体育科。ということは、あの人は何かやっているのか…?

「彼はサッカー部ですよ」
「あ、そうなの?」
「はい」

 あっちゃんにそう言われ、もう一度彼の方を見る。
 あっちゃんが言うには、豪波先輩はゆう君とげん君と同じバスケ部。それで虎臣先輩がサッカー部。因みにこの4人はレギュラー枠。てか、ゆう君とげん君凄いな…。1年でもうレギュラー枠なんだ…。

「異能者は、他の人に比べて、体が丈夫ですからね…」
「え?」

 あっちゃんがボソッとつぶやいた言葉に、あたしが思わず聞き返せば、あっちゃんは何でもないと首を横に振った。
 でも、聞いといた方が、後に使えるかもしれない…。

「どういう感じに?」
「え…。例えば、身体的に他の人より上だったり…」

 そう言われた瞬間に、火燐先輩が頭に浮かんだ。あぁ、そう言われれば何か納得。

「個人差はあるようですけどね。これで、少し問題が起きたりとかもするんですけど」
「へえ…」

 ということは、私も他の人と比べれば、少し体は丈夫ということなんだろうか。うーん、実感はわかないけど。
 思わず手をにぎにぎと握ってみた。

「おいお前ら! 早く戻れ!」
「げ、疾風が来た…」
「疾風先生だっつーの」

 向こうから、柔らかい色合いの茶髪の先生が歩いてきた。
 先生は「げ、」ともらした虎臣先輩の頭を軽く叩き、続いて豪波先輩の背中も叩く。

「おら、さっさとトレーニングに戻れ」
「ちぇっ」
「お前はもう少し先生に対する配慮を…!」

 珍しく子供っぽく拗ねる虎臣先輩に、ゆう君とげん君がポカンとした表情をする。
 まぁ、彼らがいつも見てるのは、SBの時だろうし。あたしも見てるのは、あの時の先輩だけだし。
 あっちゃんが言うには、あの先生は雨宮疾風先生というらしい。担当科目は2年の英語らしいけど…。でも運動神経の良さ等の理由で、この学科とサッカー部の顧問をしてるらしい。

「悪かったな。えーっと…体育委員の西野と東堂か」
「あ、はい」

 ゆう君が返事すれば、雨宮先生はふっと笑みを浮かべて、ゆう君の頭をぽんぽんと撫でた。

「この学科選ぶんだろ? 楽しみにしてるな」
「は、はい!」

 そう言って軽く手を振りながら、雨宮先生は戻っていった。ゆう君はニヨニヨと笑みを浮かべたままだけど。
 げん君は、何とも言えぬ表情になっているんだけど…。



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