君は考えたこともないんだろう
怒涛のテスト週間も終わり、体育祭に向けての毎日が過ぎていく。
まあこのように、何とかテストを終えることはできたのだ。そして今現在、最後のテスト(数学)を返されている。
あたしはそっと、閉じていたテストを開く。それと同時に、小さくガッツポーズをした。
赤点! 無し!
「やった!!」
この学校の赤点ラインは39点。つまり40点まではセーフというわけだ。あっぶない、本当にギリギリセーフだった…。でも安心したせいで顔がにやける。
そして授業が終了し、ゆう君達の居る方を見れば、ゆう君の顔はぱあっと輝いている。
「赤点! 無かった!」
「何点?」
「41点!」
「うわ、ギリギリ」
「奇跡!!!」
「喜べねー」
げん君の言葉に、そっと47点のテストを後ろに隠した。
そんなあたしを余所に、げん君とゆう君はお互いの頬を引っ張り合っていた。多分、ゆう君からふっかけたんだと思う。
よく見れば、げん君の机の上にテスト置いてある。
あたしはその隣にテスト(点数のところを折った)を置いて、げん君のテストを見てみる。
数学、89点。
「ふぁっ!?」
思わず出た変な声に、慌てて手で口元を塞ぐ。
しかし、彼には聞こえていたらしい。げん君はゆう君の両頬を抓りながら、あたしを見てきた。
「おい北村。なに勝手に見てんだ」
「あ! ごごごごめん! 置いてあったものだからつい!」
私が両手をブンブンと振りながら言えば、頬を撫でながらゆう君が言う。
「いいじゃん、げんげん点数いいんだから」
「そうじゃねえだろ」
そう言ったげん君はあたしを見て、
「ん」
と手を差し出した。
「え?」
「お前のも見せろ」
「えええええ!?」
嫌だよ! 何で約2倍の点数の人に見せなければいけないの!
あたしが頑なに首を振り続けていれば、ゆう君は別の方に視線を移した。
「アリスちゃんは? どうだった?」
はっとしてそちらを向けば、次の授業の準備をしているあっちゃん。
彼女は少し苦笑いをしながら、口を開いた。
「あまり、良いとは言えないですかね…」
「え? 何点?」
「68点です」
くそおおお! とゆう君と一緒に、机に突っ伏した。
良くないといって68点って…! 進研●ミの、あの漫画読んだ後みたいな気分だよ!
そうこうしてるうちに、げん君にあたしのテストが奪われた。
「おい、お前優羽と似たようなもんじゃねえか」
同類じゃねえか。
そう言えば、ゆう君が「どう言う意味だ」とげん君を揺さぶる。しかしそのままである。あたしは軽くショックを受け、ゆう君も別の意味でショックを受けていた。
期末テスト、頑張らないとまずいよなあ…。
ハァと、小さくため息が溢れた。
「南! ちょっとこっち来い」
急に草眞先生があっちゃんを呼び出した。
さっきまで騒いでいたゆう君とげん君も、思わず動きを止める。あたしもそっちをガン見してしまった。
それを見て、草眞先生は呆れたようにため息をこぼし、何かをあっちゃんに手渡した。
「これ、学校からお前の婆さんに。渡しといてくれ」
「分かりました」
それだけを言うと、草眞先生は教室から出ていく。
それと同時に、あたし達はあっちゃんの方へ向かっていく。
「それ何?」
「祖母に、渡してほしいと…」
中身はよく分からないですね…。
あっちゃんはそう言って、封筒を持っていた手を下した。それと同時に、教室に白奈先生が入ってきたので、皆が慌てて席に座る。
「えっと、今日のこの授業は、コース選択を決めるため、先輩達が授業やってる様子を見に行くよ」
そういえば、前そんな事言っていたきがするなあ…。
先生によれば、もうテストも終わったし、もうすぐ決めるから、見学に行くらしい。
「1クラスで移動するから、先輩達の邪魔はしないようにねー」
そう言って皆で廊下に出て、先生が先頭に出る。
「んじゃ、まずは普通科ね」
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