確かに此処に在り

「藤原さん、これ生徒会室までお願い」
「あ、分かりました」

 あたしは先生から数冊の本を受け取り、生徒会室に向かう。
 あたしは時羽学園の副生徒会長、藤原紫恩。この学校の生徒会長の中頭黄蘭の補佐を、主に行ってる。まあ補佐といっても、仕事したくない云々言ってるのに喝を入れたり、代わりに色々やるくらいだけど。
 何だかんだでアイツは仕事をこなすから、憎めないというかなんというか…。
 小さくため息が漏れる。
 いけない、こんな気持ちでは出来るものも出来なくなってしまう。

 あたしは昔からプライドが高くて、友達が出来ないでいた。それに素直ではないから…。そんなあたしに、黄蘭は手を差し伸べてくれたのを、覚えてはいる。
 
 本を抱えたまま、あたしは生徒会室に着いた。一旦扉の前にある机に本を置き、扉を開いてから、また本を抱えて中に入る。
 本は分厚いけれど、5冊しかなかったためあたしでも持てた。
 そういえば、この本は置いておくだけでいいんだろうか。生徒会室には、結構いろいろな資料があって、本棚もある。そこに戻しておいたほうがいいのかな…。
 そう思って本をまじまじと眺めてみる。
 うーん…。いつもの本棚ではなさそうね…。いつもだったら、過去の学校文集や卒業アルバムとかが主であり、この本はそういう系列ではない。

「別の本棚かしら…」

 けど、本棚なんて他にあっただろうか…。
 そう思っていれば、一瞬ゾクリと背筋が凍ったような気がした。
 何だろう…。幽霊とかの類を信じているわけではないけれど、少し気味は悪い。幽霊等の類は、誰かというと黄蘭や朱理の方が苦手だ。朱理はもうキャラ崩壊とまで行くし。
 と、それはどうでもよくて…。何でこんな感じがするのだろう、そう思って周りを見渡せば、少し気になるところを見つけた。

 本棚の奥に扉がある。
 あんな所に扉なんてあったかな…。あぁ、もしかしたら隠れていたのかもしれない。ここの本棚は移動式だから。
 そう思いながら、その扉の方に近寄ってみる。扉はどうも、この教室とはミスマッチな感じがした。少し西洋風な扉は、学校の教室には合わない。
 けれど、興味はある。

 昔から気になったらとことん、そんな性格のあたしが、見逃せるはずもなかった。

 あたしはドアノブを握り、ゆっくりと右に回す。すると、扉からカチリという音がした。
 鍵はかかってない。ていうか鍵穴なんてないし。そう気づくと同時に、扉を押した。
 扉を開けたことによって、ぶわりと風が来て、少し髪が乱れる。すぐさま髪を手櫛で整え、中に足を踏み入れた。

 暗いわね…。幸い五感を鍛えてあるから、全く見えないというわけではないけれど。

 でも流石に、何かにぶつかってはあれだろうと思い、ゆっくりと足を動かす。
 どこかに、電気がつけれらるものは…。そう思って壁とかに手を当ててみても、どうもそのようなものは見当たらない。
 どうしようか…。そう思って手をしたに下ろせば、ことりと音がした。
 それを見ると、どうやら燭台だ。なんでこんな古いものが…。そう思って手にとってみれば、急に火がついた。

「うわっ!」

 急なことに驚いて思わず手を離してしまう。
 しまった…! 燃える…!
 ガシャンと音と共に床に落ちる。しかし、火は全く燃え広がらず、その燭台のロウソクで燃えているだけ。

「……え?」

 疑問に思いながら今度はゆっくりと手にとって、じっと火を見てから、そっと火に手を近づける。

 熱くない。

 今度は火に手を当ててみた。燃える音も匂いもしない。火を手で切るようにしても、全く熱くなく燃えない。

「これは、能力かな…」

 まあ、今はどうでもいい。少しこれを借りることにしよう。

 燭台で周りを照らしてみれば、沢山の本。背表紙がだいぶカラフルだけど、沢山の種類があるように思えた。少し燭台を近づけて、背表紙の文字を見てみても、あたしには読めない…。字が汚いというか、慣れない筆記体とよく分からない数字で全く読めない。英語は得意ではあるが、どうも筆記体に離れていない。
 少し残念に思いながら、隣の本も照らしてみるが、同じ。これはどの本もそうだろうな…。読んでみたいけど、きっと中身も同じようなものなのだろう。せめて書いてあるのが分かったら、読めるのになあ。
 そう思いながら、ふと周りを照らしてみる。

 奥がある。

 何でだろう。ここは生徒会室にあった扉で、こんな空間あるはずがないのに…。
 でも、気になったら見てみたくなる。残念ながら人間の性には耐え切れず、足を動かした。



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