あの日抱いた絶望は
合宿最終日。SBの開催する日になりました。
そういえば、いつものSBなら委員会ごとでやってるけど、ここは能力の使えない人、先輩達も居ない。どういうふうにグループに分かれるんだろう。
あたしが疑問に思っていれば、皆で集まっていた前に、黒髪の男性が説明を始めた。
『あー、今回のSBのグループ分けはくじ引きだ。だから各自くじを引いていけ』
男性がそう言えば、あたしの横に別の男性が現れて、くじ箱を差し出してくる。
「どうぞ?」
「あ、ありがとうございます」
少し慌てながら、くじ箱に手を突っ込む。
『今回初めて一緒になる奴もいるだろうが、そこは頑張って息を合わせてくれ。異能者じゃないのも公平に入れるから不満言わないように』
――怪我をしても事故責任は変わらないからな。
そう締め括られた説明に、相変わらずなんて物騒なと思わず眉間に皺が寄る。
組み合わせはくじ引きで決められて、あたしが引いた紙には三番と書かれていた。
「ゆっきー、何番?」
あたしの前にくじを引いたゆう君があたしの手元を覗きこんできて、そんなゆう君に紙を見せながら、あたしもゆう君の手中の紙を覗きこんだ。
「3番だって。ゆう君は?」
「1番だよー。そういえばげんげんが3番だって」
「え、本当?」
運が良かったのか、知り合いが一緒で良かったというか…。
あたしが少し安堵していれば、げん君があたしに確認を取りに来たので、一緒だと答えると、よろしくなと言ってきた。
すると、あっちゃんが目に入る。
「あっちゃんは何番だった?」
あたしはげん君たちと一緒に、あっちゃんの方に向かう。
「私は…」
彼女はそう言うと、ぺらりと紙を見せてきた。
「1番です」
「あ、別なんだね…」
「アリスちゃんと一緒だー!」
ゆう君があっちゃんに思いっきりハグをしたため、あっちゃんは少し苦しそうに顔をゆがめる。それを気にせず、あたしが別々なことに少しショックを受けていれば、彼女も少し苦笑いを浮かべた。
でも、相手はあっちゃんとゆう君でもあるわけだし…少し、安心したってところもあるかも。二人の能力は知っているわけだし。
あたしがそう思っていれば、あっちゃんは少し口元の口角を上げた。
「よろしくお願いします。由希さん」
不敵に微笑みを浮かべ、あっちゃんはゆう君の隣に並んだ。
「由希さん…私、本気で参りますから」
ゾクッと背筋が凍ったような感じがした。
あっちゃんはそういうと軽く手を振り、ゆう君と一緒に他の人の所に向かった。
あたしがぼーっとしていれば、パシッと軽く頭をたたかれる。誰だろうと思っていれば、どうやら眉間に皺を寄せるげん君だったようだ。
「アホ、お前は相手が南ってことで、どこか油断してんだろ」
「え、」
ギクッとした。
「お前は今までずっと同じグループだったから分からないかもしれないが、アイツの能力はかなり厄介なんだぞ」
げん君に言われて、確かにあたしはあっちゃんの能力をずっと味方につけてたけど、それが自分に不利になるように使われることはなかった。
今まではずっとあっちゃんの能力に助けられていた。それがもし自分が使われたら…。
思わず体が固まったのが分かった。
「分かったか?」
「うん……」
「アイツの能力は、一緒に居る人によって強くなったりもする。言っておくが、優羽は結構南と相性はいい」
一瞬ありえないと思ったけど、性格ではないぞ。と言われて少しそれなら、と納得した。ゆう君には申し訳ないけどね。
すると、向こうから数人が歩いてくる。どうやら同じ3番だった人らしい。
「やあ、久しぶり」
「あ、こんにちは…」
先日ペアを組んでいた彼も一緒の班だったらしい。げん君も彼と手を合わせる。
そして皆を見ていくと、どうやら能力が使えるのはあたしとげん君、それとペアだった彼だけの様で、残りの3人は違うらしい。
「オレは個人で動いた方がやりやすいから、そうさせてもらいたいんだけど…良いかな」
「まあ、俺達に不利にならないようなら構わない」
こんなんで大丈夫なのかな…。と何とも言えない気持ちでいるのと同時に、スタートの用意を促す声が響く。
「今回はセンサーとかないの?」
「ない。今回は勝ち負けというより、この合宿の練習の成果を発揮する場だからな」
「……まって、センサーってあれは、死なないように守ってもくれるんだよね?」
あたしが思い出したことを言えば、げん君は苦虫を噛み潰したような顔をして、あたしを見た。
「この合宿には使われない」
「つまり?」
「死ぬなよってこった」
目の前が真っ暗になった気がしました。
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