幸福フレーム

「音雲ー。蓋とってー」
「はい。どうぞ」
「ありがとう!」

 リビングのソファーに座りながら、あたしはそんな会話を聞いていた。
 今日の放課後のかくれんぼが終わってから、あたしとあっちゃん、ゆう君とげん君、計4人で火燐先輩のおうちにお邪魔することになていた。
 しかし、そんなあたし達が着いた家に、火燐先輩と水憐先輩が「ただいま」と入るのはわかる。しかし、音雲先輩、輝先輩、彩兎先輩も「ただいま」と言って入るのはどういうことなのか。
 しかも、中に入ればもう中には桜嵐先輩、豪波先輩もいるという始末。

 訳が分からない。

 あたしと同じことを思っていたらしい、あっちゃんたちもポカンとその様子を見ていた。


「由希ちゃん達って苦手な食べ物ってある?」
「あ、あたしは辛いものが…」
「私は特にないです」
「俺は野菜苦手ですー」
「優羽、お前は野菜を食え。俺も特にないです」

 それだけ聞くと、火燐先輩は再び台所に戻る。

「あの、先輩達ってどういう関係なんですか?」

 ゆう君が偶々目の前にいた、豪波先輩に問いかけた。そんな豪波先輩は隣にいた桜嵐先輩と目を見合わせる。

「なんて説明したらいいんだろうな」
「そうっスねー…。一言でいえば家族っスかね」

 家族か…。そういえば、前に焔真先輩も同じようなことを言ってなかったか。
 パッと見た感じでは血の繋がりは感じられない。だから本当の家族ではないのだろう。

「一緒に暮らしている、だけですよ」

 わきから水憐先輩が口開く。そして近くのソファーに腰かけた。よく見ればこのソファーもかなり大きいよな。お客さんがいっぱい来た時様にかと思ったが、どうやら違ったようだ。

「一緒に暮らしてるって?」
「そうですね…。シェアハウスと言えば少しは納得できますか?」

 あぁ、そういう感じかぁ…。軽く納得した。

「でもなんで一緒に?」

 ゆう君がそう聞けば、水憐先輩はもう面倒くさくなったのか、目をそらした。
 その様子に、ゆう君が軽くショックを受ける。そんなゆう君を見て、豪波先輩が苦笑いをして、口を開く。

「ちと重い話になるんだが良いか?」

 豪波先輩の言葉に、あたし達が頷く。それを見て、先輩は小さく笑みを浮かべてから口を開いた。

「十年前にとある町で、町の人間を人質に取って、能力を狙う奴等が立て篭った事件があっただろう?」

 その言葉を聞いて、あっちゃんが反応し、ゆう君とげん君も険しい顔をした。
 あたしも能力を狙う奴を知っている。この町に引っ越して、あっちゃんと出会ったあの日。その時に見てしまった。もうあたしも関係ない話ではない。

「そうなんですか?」
「由希さんは知らないかもしれませんね。何せ当時は5、6歳ですし」
「……皆は知ってるの?」
「知ってるよ。結構大きな事件だったし、当時は幼くても結構な騒ぎになったから、先生とかに教え込まれたからね」

 十年前、当時のあたしはまだ5、6歳。新聞を読む習慣はまだ無かったし、能力についても何も知らずに普通に生活していた。

「当時の俺たちは幼かったからな、よく分からなかったんだ。それでも、俺たちが一緒にいたら、周りが大変な目に合うんだってのは、幼い頭でもわかった」

 そこでここだ。そういって豪波先輩は座っているところを指さす。まあ正しくはこの家だろうが。
 
「この家は時羽学園が用意した家なんだ。同じ町にいた俺たちは、この家で一緒に暮らすことになった」

 豪波さんの言葉に、私とゆう君が、へぇと言葉を漏らす。
 時羽は異能者の保護を結構やっているみたいで、この様な事例が結構あるらしい。まあ家を用意するというのは結構珍しいらしいが。それはここに居る皆さんが元から近くにいたもの同士だからだろう。

「だから俺達はずっとここに居るから家族みたいなもんなんだ。まあ学校にいる親しい奴らも、大体は知ってるよ」
「嫌じゃないんですか?」

 ゆう君の言葉に豪波先輩は笑い、ガシガシと隣に居た水憐先輩の頭を撫でる。

「嫌なんかじゃねえよ。大切な奴等なんだ」

 そう言う豪波先輩の顔は優しいもので、本当にそう思っているんだなってことがよく分かる。

「あ、因みに俺らは委員会で区切られてるだろ? だから周りの奴等は俺等のことを水憐一家とか火燐一家とか呼んでるんだぜ」

 おもしれーよな。と先輩が言えば、水憐先輩が撫でられてた手を払う。

「子ども扱いはやめてください」
「えぇー。でも水憐さんは実際に自分たちより年下じゃないっスか」
「たった1歳です」
「学生の時の1歳って結構大きいぜー?」

 そんな言い合いをしている3人を見ると、本当に微笑ましい。思わず4人で顔を見合って笑みが浮かんだ。



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