コンビネーション

 先日のSBから暫く。
 今月はもうこれは無いらしい。あっちゃん曰く、偶にこういうことがあるそうだ。それは色々な理由があるらしいけど、それは教えてくれなかった。

 先日彩兎先輩に言われたことは、今でも結構グサッと来ていて、中々きついものがあった。けれど、特訓しないといけないことは変わらない。だから、あたしは前を向かないといけないと思う。
 そう決めた、もう少しで四月も終わりを告げそうな頃。




「かくれんぼ?」

 あたし達の声が重なる。
 そんなあたしたちの目の前にいるのは、ゆう君。

「そ、今日は俺達部活もないしー。アリスちゃん達は部活やってないから、時間はあるでしょ?」

 まあ、時間はあるけど…。何かまるで暇人だと言われているような気分だ。
 チラリと横のげん君を見る。
 う、うわーっ! 読める! げん君の顔に「また面倒くさいことを提案してきやがったコイツ」って書いてあるのが、はっきりと読めるー!

「西野さん。東堂さんが、また面倒くさいことを提案してきやがったコイツ。と思ってます」
「あっちゃん言っちゃダメだ!」

 まるっきり顔に出ていたことが判明しながら、あっちゃんに静止の声を上げれば、ゆう君は軽く涙目でげん君を見る。げん君はそっと顔を逸らした。もう、認めてることになってますよ、げん君。

「まぁ、これは草眞先生の? 発案なんだけど?」
「草眞先生の?」

 何で先生がこんな提案を?

「アリスちゃんの能力を伸ばす意味と、それの欠点を見つけるためとか、逆に見つけられないようにする特訓とか、色々…」

 ゆう君がそう言えば、成程と納得する。
 じゃあ鬼はあっちゃんがやるってことなのかな。あっちゃんが何も疑ってないのは、きっとゆう君の言ってることは、嘘じゃないからだと思う。

「じゃあやろうよ!」
「ゆっきーノリ良いね!」
「俺はパス」

 あたしが元気に声を上げて腕を伸ばし、ゆう君がグッと親指を立てる中、げん君がそう言うと、あたしとゆう君が「えー」と軽いブーイングが出る。
 すると、あっちゃんが小さく「そうですね」と呟いた。

「私の能力では直ぐに終わってしまうでしょうし。かくれんぼが苦手なら、無理して付き合わなくても良いと思います」

 あっちゃんがそう言えば、げん君がピクリと反応した。

「……ふん、良いよやってやる。苦手なんかじゃねえし」

 あっちゃん煽り上手だなー。げん君も思った以上に負けず嫌いなようで。
 そう思っていれば、色々ルールも追加されていく。やっぱり隠れるだけだとつまらないから、隠れ鬼にしよう、とか。隠れんぼだと、圧倒的にあっちゃんが有利だからね。制限時間は1時間。行動範囲はこの学校全体。

「他には…」
「へー、楽しそうなことしてんじゃん!」

 声のした方に顔を向ければ、ドアの所に生活委員と体育委員の皆さんが集合していた。
 え、えー…なんでこんな集合してるんだろう。
 そう思っていれば、どうやら色々仕事があって、それが終わってこっちに来たら、あたしたちの声が聞こえたので覗いたらしい。

「良いねえ君たちは暇そうで。そんなアソビに費やすなんて信じられないよ」
「全く、それなら勉強するなり、自主練でもするなりしたらどうですか?」

 彩兎先輩と水憐先輩に言われ、うっと言葉が詰まる。しかも先日キツく言われた方から言われれば、どうも辛い…。
 すると、そんな私の気分に反して、笑い声が聞こえた。

「良いじゃねえか楽しそうで! 何なら俺も入れてもらおうかなーかくれんぼ」
「そうっスねー。楽しそうっスわ!」
「は!?」

 豪波先輩と桜嵐先輩の声に、水憐先輩の少し裏返った声が響く。そしてそのまま二人を蹴っ飛ばした。

「何がかくれんぼですか二人して――! 前回のテストの成績が酷くて怒られるのは僕なんですよ! もっと3年としての自覚を持ってください!!」
「でも自分はやればできる…」
「だったら最初からやりなさい!!」

 水憐先輩はがっくんがっくんと二人を揺らし、怒鳴っている。おおう、先輩って結構叫ぶんだなあ…。
 そしてそのまま、二人の先輩をずるずると水憐先輩が引きずる。おおう、成績悪いと、先輩に回ってしまうのか…! つ、次のテスト頑張らねば…!!
 そしてそれについて行くように、彩兎先輩も歩いていく。

「と、取り敢えず話戻して…」
「あ、じゃあさ、私達も参加してもいい?」
「え?」

 ゆう君の言葉に、火燐先輩が笑みを浮かべながら、焔真先輩と輝先輩、音雲先輩の腕を取り、そういう。

「それに、これ草眞先生が言ったことなんでしょ? だから一緒にやりたいなーって」
「じゃあ火燐先輩も鬼一緒にやったらどうですか? 先輩足速いですし、良い特訓になりそうです!」
「お、良いね! 彩鈴ちゃんが見つけて、私が捕まえる。連携の練習にもなるってわけだ」

 私が提案すれば、火燐先輩が了承してくれる。良かった、変な提案したかと思った…。
 すると、水憐先輩と彩兎先輩がピクリと反応した。そして二人は豪波先輩と桜嵐先輩に向き直り、片方は笑顔、片方は真顔で告げる。

「僕達少しかくれんぼに参加してくるね!」
「必ず勝ってくるのでご心配なく」
「お前等…」
「火燐さんに見つけてもらえるのと勝てるってところに惹かれたっスね、この二人」

 ……という事で、鬼はあっちゃんと火燐先輩。隠れる&逃げるはあたしを含めた7人、で、

「かくれんぼ開始ー!」



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