前に進む勇気を

 今から数年前、私達の住んでいる町である事件が起きた。とある集団が、私達を襲ってきたのだ。
 当時の私達にはあいつ等に対抗できる力が無くて、ただ震えながらそれが終わるのを待っていた。
 けど、私には相手の目的であるものを持っているわけで、あいつ等が私にも目を付けた。


「お前等も異能者だな? 来い」
「嫌だ! 誰がお前等なんかに!」

 拳銃を向けられる中、私はそう言って、大切な彼らを庇うように前に立つ。

「チッ、良いから来い!」
「嫌っ!!」

 私が首を激しく横に振った。皆は心配そうな顔をして私の顔を見る。
 私は安心させるために微笑み、もう一度相手の方を睨みつけた。

 すると相手もなかなか来ない私達に腹が立ったのか、声を上げる。


「良いから来いと言っている! さっさと言う事を聞かないと貴様、只ですむと思うな!?」
「やれるもんなら、やってみなさいよ!」

 私が挑発的に言えば、私は走り出す。
 足の速さには自信があった。この町で1番速いのだから。

 私が走り出せば、相手は私に目が集中する。
 その間に、誰か、大人が彼らを助けてくれる。そう信じた。

 だから走るしかなかったのだ。

 皆は、私が守る。

「生意気なガキが! お前等、あのガキに集中しろ!」
「姉さん!」
「大丈夫! あんたらは逃げてなさい!」

 まだ能力がうまく使えない彼は、影から怯えたように見ていた。私が走りながら叫べば、相手が攻撃を仕掛ける。
 彼らが手にしたのは銃のようなもので、その銃口は私に向いていた。

「うわっと!」

 足の辺りを攻撃してきたけど、何とかよける。大丈夫だ、きっと本気で殺しはしない。そうした場合、意味はないのだから…。
 しかし、相手は私が避けたのが余計苛立ったみたいだ。

「おいお前等、遠慮は要らない。思いっきりやってしまえ」

 そう指示すると、弾が私の顔の方に向かってきた。
 思わず固まってしまった私の顔に近づき、こめかみの辺りに当たる。

「いっ!!」

 あまりの痛さに倒れそうになる。弾はきっと実弾ではない。だけど、かなり痛い…。
 そしてそのまま、派手に尻餅つく直前で、支えが入った。
 振り向くと、何処かの制服なのか、ブレザーを着た私より少し年上の男性が、私を片手で支えていた。
 そして地面にへたり込んだ私がその男性を見ると、男性は相手を睨みつけていた。

「何だ貴様は!」

 相手は男性を見ながら言う。

「俺は時羽学園の生徒だ。依頼内容に基づき、貴様等を拘束に来た。今すぐこの地から去れ。抵抗するようなら、容赦はしない」

 高らかに宣言する男性を、私はただ見ているだけだった。

 男性がそう言えば、相手は怯みながらも攻撃を仕掛ける。私が叫べば、男性は怯むこともなく、構えた。
 男性の動きは、素早すぎてよく見えなかった。けれど、相手の攻撃を全て無効にしているのは、子供である私でも分かった。

 相手はそれで恐れたのか、悪態を吐きながら、立ち去った。


 すると町の皆が男性の周りに集まりお礼を言う。
 男性は戸惑ったようにお礼を聞いてから、皆が散らばった所で男性は私の方を向き、屈んだ。
 そして、さっき怪我をした所を彼が持っていたハンカチで抑える。

「すまないな、俺がもっと早く駆けつけていれば、怪我はしなかっただろうに…」
「い、良いんです。助けてくださって、ありがとうございました!」

 私は座ったままお礼を言うと、男性は微笑んで私の頭を撫でた。しかし、彼は直ぐに少し残念そうな表情をする。

「明日くらいに、お前や向こうにいる奴ら宛に手紙が届く。そこに書いてあるとおりにしてくれ」

 私は訳が分からなかったけど、首を縦に振った。その様子を見て、男性はもう一度微笑み、軽く頭を撫でてから、立ち上がり、踵を返した。
 そして男性が町から出て行くとき、私はずっとその男性を見ていた。

 時羽学園…か。

 私の口が緩むのを感じ、私は1つの決意をしたのだった。



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