どの方法なら勝てるか

「合体技?」

 あたしは思わず首を傾げた。
 あっちゃんも同じく隣で首を傾げていた。そしてお互い顔を見合わせる。いったいどいういうことなんだろう。
 あたし達が困惑の表情でいれば、火燐先輩はふふんと、少し勝気な表情をする。そして先輩が横を向けば、焔真先輩が黒板に図を書き始めた。おお、絵が上手い。
 焔真先輩が書いた図には、二人の女の子がいて、髪型的に多分火燐先輩とあっちゃん。あっちゃんだと思われる子の後ろに、火燐先輩が並んでいる。

「まず、彩鈴ちゃんの能力は便利だけど、私達には中々うまく使えない」

 火燐先輩がそう言えば、あっちゃんは首を縦に振る。いつものポーカーフェイスだけど、どこか少し悔しそうだ。

「それは、彩鈴ちゃんの能力が、彩鈴ちゃん本人にしか分からないから」

 そこで。
 火燐先輩がそう言えば、火燐先輩がチョークを手に持ち、書こうとするが、躊躇ってやっぱりチョークを置いた。

「焔真書いて…」
「はあ…」

 焔真先輩が小さくため息を吐いてから、もう一度焔真先輩がチョークを手に持ち、黒板に書き込んでいく。

「そこで! 彩鈴ちゃんの能力を、私達にも見えるようにしたいわけ」
「と、言うと…?」

 あたしがそう言えば、火燐先輩があたしの方を見てくる。

「私の能力は、炎を操る能力だよね?」
「そう、です、ね…」

 それがどうしたんだろう。

「私の能力は、皆でも見える」
「はあ…」
「つまりはどういうことで…」

 火燐先輩が焔真先輩に近付き、指で黒板をなぞる。そのなぞった後を、焔真先輩がチョークで書いていく。多分、火燐先輩が書けないから、指示だけは出して、あとは焔真先輩に任せてるんだと思う。
 そして黒板には、火燐先輩の周りに炎っぽいのがあって、その炎があっちゃんの方に伸びていた。

「私の能力を、彩鈴ちゃんに渡す」
「渡す…?」
「貸すっていうか…。まあ能力を彩鈴ちゃんの方へ向けるという感じかな?」

 火燐先輩が言うには、先輩の微量な炎をあっちゃんの方へ向け、その炎を使って、あっちゃんが指示を出す、ということ。

「どう? できそう?」

 火燐先輩はあっちゃんに声をかける。
 先輩はもう大体能力がうまく使えて、力加減もできる。だからあっちゃんが危ない目にあうこともない。だから、あっちゃんの見えた物を先輩の炎を使って、あっちゃんが指示を出す。あっちゃんの視界が先輩に見えるわけではないから。
 あっちゃんが口を開く。

「私には、指示を出せないと思うんです…」
「そうかな…」

 火燐先輩が少し残念そうな表情をする。
 その表情を見て、あっちゃんは少し悲しそうな表情をした。その表情を見て、少し火燐先輩が慌てる。

「えっと、まあまだ一年だし、先輩に指示を出すっていうのは躊躇いがあると思う。けど、やっぱり勝つためだし…」

 考えておいてくれる?
 火燐先輩が笑みを見せ、あっちゃんが首を縦に振った。

 それは、昨日の昼休みの話。


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