はじまりはじまり

暖かい風が頬を撫でる、のんびりとしたお昼どきのとある田舎道。

 時刻はちょうど太陽があたしの真上に来るかというところで、木々の隙間からキラキラと降り注ぐ陽光が眩しい。それに反してあたしの気分は暗い。大きく溜息を吐いて、電柱にもたれ掛かる姿は端から見れば少し可笑しな光景かもしれないが、今此処にいるのはあたしだけなので大丈夫。他には人っ子一人いない。

 実はあたし、最近この町に引越してきた、いわゆる新参者。この町の近くに、私が新しく入学する学校があるのだ。
 エスカレーター式の学校で、初等部から高等部まで。それに専門学校や大学部まであるという話だ。友達なんて出来る訳ないじゃない。

 フフフッと乾いた笑みがこぼれた。

 ことの発端は、あたしが高校入試を終え、中学からの友人と一緒に進むことが出来ると喜んでいたとき、両親に急に言われた編入と言うお言葉。
 しかも、ご丁寧に決まってた学校の入学を取り消して。勝手に学園に書類を送って。あれよあれよとここに進むことになってしまった。
 てかさ、書類だけで進学って、可笑しいでしょ。何でよ。

 少しイライラしながら歩いていれば、お腹も空いてきたし、家に帰ろうかな。

 きゅるるるる、音が聞こえてあわてて手で腹を押さえる。誰も見ていないとはいえ、こうも情けない音が出ると少し気恥ずかしさを感じてしまう。

 さっさと帰ってしまおうと振り返ると、とある少年と目が合った。まさか、ずっと後ろにいたとか…やばい、お腹の音聞かれてたよね恥ずかしい!
 ここは何事もなかったようにやり過ごそう、無表情を装って少年の横を通り過ぎようとすると、今日着ていたワンピースの裾を掴まれた。小さい手からは想像できない強い力だ。ななな、なんですかあたし何かしましたか。お腹の音ですねわかります。

「助けて!」
「はっ、えっ!?」

 少年、どうしたというのだ。取り敢えず落ち着いてくれ! そんなことを言っているあたしも落ち着くべきだけれど!
 あたしが困惑した表情でいれば、こんな小さなこからは想像できないような力で引っ張られる。非常事態、その単語が頭をよぎった。あたしは驚いていたが、直ぐにハッとし、少年を脇に抱えながら走る。力には自信があるので!



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