鍵を握っていくもの

 スタッと火燐先輩が足をつけたのは、屋上だった。えっと、その…。先輩は本当に人間なんだろうか…。だって、この学校四階建てだよ? かなりの高さですよね。
 火燐先輩が彩兎先輩を下ろし、彩兎先輩が私を下ろした。それと同時に、屋上の柵の近くまで行って、下を覗き込む。改めて見ると、やっぱり高い…。

「せ、先輩って…何者なんですか?」
「え? 私?」
「はい…」

 んー、と言って、顎に指を当てながら、少し考える素振りを見せる。少ししてから、ぱっと笑みを見せた。

「少し力が強くて、脚力が強い、普通の女子高校生?」
「普通でしたら、こんな屋上まで跳びませんって!」

 ビシッとグラウンドを指差しながら、かっとなって叫べば、先輩はあははっと笑う。くぅ、この学校は常識が通じない…!
 差していた指をおろし、小さく息を吐いてから、先輩と向き合う。

「その、このSBって、今回だけなんですか?」
「ん? いや? 毎週火曜日の放課後、行うよ」
「は、はぁ!?」

 毎週火曜!? そんな頻繁に行ったら、あたしの身がもたない…!
 無理無理無理! そんな、あたしなんかが出来るわけが…。

「出来るわけないじゃないですか! あたし能力もなんも、つい昨日知ったばっかなんですよ!? 絶対無理です!」

 あたしが両手をブンブンと振りながら、屋上を去ろうとすれば

ドォンッ

 と、もう、今日一日で聞きなれた爆発音が聞こえた。もう、慣れてしまうあたしが怖い。本当は慣れてはいけないことだと思う。
 目の前に吹っ飛んだ扉。屋上への入口から、もくもくと煙が出ている。もう少しで、ぶっ飛ぶところだった…。
 腰を抜かして、あっぽん口でいれば、誰かが入ってくる足音がした。

「やっべ、やりすぎた…」

 軽く慌てたような声色が聞こえて、煙が晴れてきて姿が見えてくる。声からして女性だろう。そんな彼女は、あたしに気づいたようだ。

「やあ! こんにちは!」

 ニッと人当たりのいい笑みを見せながら、彼女は挨拶をした。あたしの後ろに駆け寄ってきた、先輩二人のうち片方が舌打ちをした。多分彩兎先輩、だと思う。
 けれど、目の前の彼女は笑みを見せている。

「私は雀部朱理。生徒会、そして四天王の一人さ」

 また四天王かよ! いい加減もう嫌になってきた!
 彼女はそう言うと同時に、手のひらを広げ、かなりの大きさの炎の塊作り、それをあたしに向かって投げてた。

「ひっ!」

 情けない声を出して、慌てて横に転がるように避ける。
 正直に言えば、さっき見た火燐先輩より強力な炎は、あたしは避けるだけで精一杯で…。慌てて先輩たちが駆け寄ろうとしているのが、あたしに声をかけていることから分かった。



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