何も知らないパウダーブルー
もう少しで夏休み、という時のSB。
会長に会うには、この時間しかない。普段の休み時間に行こうと思っても、3年の教室に行くのは恐ろしい。選択授業の時は別の塔で無理。放課後は、会長に会う確率はとにかく低い。てか会えない。
だったら、今この時間しかない!
あたしは必死に走り回っていた。学校中を走り回り、窓を飛び越え、フェンスを飛び越え、どんどん生徒会室から離れてる気がするけれど!
でも、それは探す目的ともうひとつの理由があったからだ。
「うわあああ!!」
あたしはもう恒例といいますか…。武関君から逃げ回っていた。
初めてのSBの後から、生活委員の中ではあたしは『武関君係』とまで言われるようになってしまった。なんということだ。あたしはこんなことを望んでいないというのに…!
普段はあっちゃんと一緒に行動することが多いんだけれど、生徒会が現れた時には、あっちゃんは朱理さん。あたしは武関君という形になっていた。あっちゃんは、先輩がセットになっていたんだけれどね…!
先輩が言うには、この方が成長しそうだもんね。とのことだ。武関君相手なら、ポイント少し減ってもいいから頑張って。と言われてしまった。その分私たちが頑張るからと。
そう言ってもらえると少しは気が楽にはなるんだけどー…!!! けど、実際に戦うとめっちゃ怖いんだよおお!! なれないよおおお!!!!
いくらあたしが成長した、と言ったってそれは周りも同じだ。あたしだけが成長してるわけじゃない。
走り続けて、学校のフェンスを超えて、目の前にプールが見えた。
「バカだね、僕の能力を忘れたか…!」
「げっ!」
上の方から声が聞こえて、見上げてみれば、木の上に武関くんが立っている。
そしてその彼は能力を作動している最中だったようで…。
プールの方を見ると、プールの水が波打っている。武関君の手の動きと同じように、押せば波ができ、プールの中で水が大きく動く。
そして武関君が腕を上げた瞬間――
大きな音と共に、大きな波がこっちに向かってきた。
「うそぉ!!」
あたしは慌ててその場を離れる。
ひいいい! 津波の恐怖ハンパない!
なんて、完全に逃げられるわけもなく、あたしは彼の起こしたカルキ臭い津波に襲われてしまった。
ああ…桃太郎ってこんな気分だったのかな。
なんて思いながら、どんぶらこと流される。
「あ、しまった凍らせればよかった」
なんて、武関君の言葉は聞こえるはずもなく、どんぶらこっこと流され、漂流したのはしばらく経ったあとだった。
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