転がり落ちる

 ピチョン―――


 雫がたれて水に落ちる音が辺り一面に響く。
 その音を体全体で感じて、あたしはゆっくりと目を開けた。

 目を開けて、横になっているの気づいてから、ゆっくりとした動作で体を起き上がらせた。そしてそのまま周りを見渡す。
 見渡す限り平行な世界。それも、水浸し…。簡単に言えばすっごい浅い浅瀬。浜辺って言った方が近いかもしれないけど、でも浜ていうものがないんだよね…。
 本当に一面水しかない…。

「なんだろうここ」

 むにっと頬を抓ってみる。

 痛くない。

「なんだ夢か」

 そりゃあそうか。だってこんな幻想的な風景、実際に目に入るとしたら海外とかだろうし。日本じゃ無理だろう。てか近所にこんなところなんてないし。
 全体的に空気は、霧がかかったかのようにモヤモヤとしてて、パッとしない。でも、夢ってそんなものなのだろうと自己完結してみる。

 でも、なんでこんな夢を見てるんだろう。

 パシャンッと足元の水を足で蹴ってみる。水はキラキラと光を反射させてから、再び水面に落ちた。

 それより、この水の下ってどうなってるんだろう。

 思わず屈んで、水の中を覗こうとする。
 浅瀬だから、地面が見えるはずなんだけど……。地面が見えない。深い、深い闇しか見えない。

 夢の中だからって、何でもありなんだなあ。

 なんて、思わず自傷気味な笑みがこぼれた瞬間……。


――ガシッ


 そう効果音が聞こえるような勢いで、腕が掴まれた。

 何に? 水の底の闇に。

「闇に!?」

 思わずノリツッコミしてしまったよチクショー!
 なんて思っているのも一瞬のうちで、その闇は一気にあたしを引っ張った。

 ドブンッと、水の中に飲み込まれた音が、耳を通して全体に響いて聞こえる。
 浅瀬で、さっきまで歩いていたはずなのに沈んでる。ごぽごぽと、あたしの口や鼻から気泡がこぼれる。

 このままだと溺れる…!

 それより、どうして引っ張られた?

 底が見えない、深い闇があたしを招いているように見えた。

 嫌だ、そこには行きたくない。私は光のある所で過ごしていたい。闇しかないところでは、過ごせない。居たくない。

 けれど、その闇はあたしの意見など聞く気もないように、あたしにまわとりつく。

 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌っ!!!

「誰かっ!!」

 必死に上の方に腕を伸ばす。もう水の向こうなんて見えない。

 闇が、口の中にまで入ってくる…。全てを、あたしを奪おうとする。


 嫌だっ!



 助けてっ…!!




← / 





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -