体育祭 中

 応援合戦も無事に終了し、次は私たちの1学年種目だ。借り者競争。
 一体どんな内容が入っているんだか…。

 各軍一人ずつスタートして、10m離れたところに置いてある箱に手を突っ込み、そこから紙を広げ、書いてある内容の『者』と一緒にゴールする。因みに、当てはまる人物は、他軍とかの場合は逃げても可。そして観客の人でも可能。なのでこの種目は、結局全員参加という形になっていると言っても過言ではない。
 しかも、これは異能者を自由に使うことも可能だ。何が言いたいかといえば…。他の軍に狙われないように、異能者の人は気をつけろよ、という話だ。あっちゃんとげん君は狙われそうだなあ…。

 そして、これは各軍の色ごとの服を羽織る。これがバトン替わりみたいな感じかな。でもリレー方式ではないけど。さっきの個人走と同じかな。
 白軍は白衣。まぁ科学者というか医者というかそんな感じ? なんか連れてこられる人が実験対象にされそう。黒軍はスーツとサングラスと帽子。マフィアみたいな感じだろうか。怖い。青軍は警察の服。追いかけられたら捕まりそうだ…。そしてあたし達赤軍は海賊服と帽子。これも、追いかけられたら怖いだろうなあ…。

「全部追いかけられたら怖いね」
「それが狙いだと思います」

 それで逃げてもらい、必死に追いかける。それで鍛えていくという感じ。とのことだそうだ。そんなサービス精神いらない。あっちゃんは軽く準備運動してる。もう狙われてることわかってる。あ、よく見たらげん君もスタンバッてる。アップ始めてる。これ、2人で一緒に行動してたほうが良いんじゃ…。

 これ、内容によって決まるから、結構運も関係してくるなぁ。

 そう思っていれば、早速始まって、前の方から叫び声が聞こえてくる。見てみれば、名簿順だったので、トップにいた紅煉君だった。

「おぃぃ! カツラ着用の先生って誰だよ!」

 絶対前に出てくるわけがない。あ、紅煉君、あの先生頭押さえてるよあの人じゃないかな!

「他軍のリレー選手……。あ、待ちなさーい!!」

 これまたトップだった天川さん。早速鬼ごっこが始まっていた。あ、結構足速い…と思ったらすぐバテていた。

 いや、もっと平和的な内容だと思っていたのだよ、私は。何か『自分の好きな人』とかで、照れながら探すとか、そう言う青春を物語るものかと思ってた。けど違った。
 皆思っていることは同じだったようで、もう皆は、自分がマトモなのが当たるようにと祈り始めている。

「今日のパンツ赤色の人居ませんかー!?」

 けど、望みは低そうだ…。


 あたしは結構名簿順の早いところにいるので、直ぐに順番は回ってきた。
 わ、わー…ドキドキする。
 前の人から、海賊の衣装を借りて、それを着る。

 あたしがスタート地点に立てば、あたしの横の子が少し不安そうな表情をしていた。うん、分かるよその気持ち。

「ゆっきー頑張れー!」

 ゆう君の声がしたのでそちらを向く。するとあっちゃんも口で頑張れと言ってくれた。私はそれに首を振って頷く。
 少し不安な気持ちを抱えながら、あたしの番がスタートした。

 一気にくじ引きのところに向かい、中に手を突っ込む。そして紙を引っこ抜いた。

 さぁ、中身は何だ。吉と出るか、凶と出るか…! できるだけ簡単な物であってくれ!

 引っこ抜いた紙をソっと捲る。中に書かれていたものは…。

「……無理じゃね?」

 あたしがポツリと呟けば、放送委員の狸珀先輩が実況する。

『おっと、赤軍の選手動きが止まってるぞ。どうした?』

 他の子はみんな思い思いに探しに出ている。
 そんなあたしの内容は…。

“カップルで来てる観客”

 無理じゃね!!??
 なにこれ無理だよ! 誰だよこんなの作ったの!



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