体育祭 前

 時羽体育祭

 全ての軍、生徒が勇気と名誉とその他もろもろのものを賭けて、ぶつかり合う時羽行事の一つ。
 
 それが今、見事な――――






 大雨の中スタートいたしました。


「何でやねん!!!」

 普通ここは快晴ではないのか!!!

『1年の北村由希さん、見事なツッコミありがとー!』
「うっさいわ!」

 早緑先輩の能力によって、背中に翼を作ってもらった…と言えばいいのか…。まあ兎に角、その翼で空を飛びながら、紅煉君が実況をしていた。
 ていうか、体育祭は雨が降らないんじゃないのか。てか昨日の天気、明日は晴れるって言ってなかったっけ? あれ? あたしの見間違いだったのかな…。
 なんて思っていたら、狐紀君が雨降る中、普通にグラウンドの上を飛び回る。

『さて、今年も体育祭が開催されましたが…。恒例の大雨ですね!』
「恒例なの!?」

 あたしがツッコミを入れる様子を、ゆう君は爆笑しながら見てくる。いや、そんな爆笑されても…。

「ねえ、体育祭って、雨降らないんじゃなかったの…?」
「いえ…。正しくは、雨が降っても降らなくても変わらない。ということなんです」
「え?」

 もしかして、雨降った中でも普通にやる、ということなのか。えええ…それはどうかと思うよ。
 あたしが少しがっかりしていれば、再び実況が始まる。

『それでは、こちらも恒例…。余興といきましょう!』

 そういって紅煉君が腕を伸ばし、指した場所には、四天王メンバーが居た。

『それではご覧ください。生徒会四天王メンバーの余興祭りです!』

 そう実況されれば、わあっと歓声が上がる。そんな中あたしは取り残されているのですけど。
 あたしだけだろうな。こんな感じなの。
 兎に角、状況が読み取れない中、まず最初に武関君が空に向かって指を鳴らした。その瞬間、降っていた雨が動きを止める。そしてそのまま武関君は指をクルリと回せば、雨は渦となって集まる。
 渦になったのと同時に、朱理先輩が背中に翼を出す。よく見ると、その翼は炎のようで、そんな使い方もあるのかと、思わず感心してしまう。そして、竜峰君を抱えながら舞い上がる。高く舞い上がると同時に、先輩は竜峰君を放り投げた。

「えぇぇぇ!!??」

 あたしと同じ反応してる人がかなり居る中、竜峰君は空中で見事クルリと一回転し、彼の能力である風を使い、空中に留まった。それを見て皆がおぉと声をもらす。
 それと同時に、朱理先輩はでかい火の塊を雨の渦に向かって放つ。すると、雨と火がぶつかり合い、パァンと弾ける。弾けた雨粒は、は先輩の強い力で蒸発してしまう。

 しかし、その場の雨が蒸発しただけでは雨は凌げない。そこで竜峰君は空の方に向かって手を伸ばし、渦をかくように腕をグルグルと回す。空の雲が集まった瞬間、彼が指を弾くと、一瞬の強い風で雲が弾けとんだ。
 それを見た、地上にいる虎臣先輩が、両手を勢いよくグラウンドに叩き付ける。するとグラウンドは一瞬のうちに、濡れている地面から、体育祭にちょうどいい地面へと変わった。
 
 すると朱理先輩と竜峰君が、ふわりとグラウンドに着地し、4人が揃ったところで、4人で同時にぺこりと、まるでショーの終わりのように頭を下げた。
 そんな4人の頭上には、綺麗な虹が架っていて、まるで一つのショーを観たような感覚になる。

 わあああっと歓声が上がった。

『見事なパフォーマンスありがとうございました! 今一度! 彼らに大きな拍手を!』

 広いグラウンドなのに、全く小さく感じない拍手が聞こえる。

「わー、面白い!」
「まだまだ。これから始まるんだから!」

 ニッとゆう君が笑みを浮かべる。

「時羽の3大祭り、楽しんでくださいね」
「うん!」

 あっちゃんに言われ、私は思わず満面の笑みを浮かべた。



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