Ich hatte wichtiges Ihr Bestehen vergessen.

 体育祭の練習は、放課後に行われる。中学や小学とは違い、学校の授業で練習を行う、というのはなくなる。しかし、放課後の練習に向け、特に応援リーダーを中心に、盛り上がっているのは事実。
 今、現在進行形で、体育祭の練習が行われている。
 体育祭の練習と言っても、応援練習が主なのだが。その時に、応援団が考えた応援を覚え、それを軍で練習する。踊るのもあるから、他の生徒も必死だ。
 そんな中…。

「由希さん、すみません今日の体育祭練習、行けないかもしれません…」

 彩鈴が手を合わせながらそう言えば、由希は驚いたた表情をして、どうしたのかと聞いてくる。

「少し先生に捕まってしまって…。手伝いをしなければならなくて…」

 先日行った授業選択。それで専門知識習得科を選んだ彩鈴。その関係で、先生に色々と頼まれた。今回はその一つ。
 荷物運び等色々…。彩鈴が申し訳なく理由を言えば、彼女は首を縦に振った。

「分かったー。それならば仕方ないもんね」
「ありがとうございます。本当にすみません…」

 彩鈴が申し訳なさそうな表情をすれば、由希は気にしないでと笑みを浮かべる。
 彼女にとっては、初めての時羽での行事。それがあってか、練習でも楽しみになっていた。


 そうこうしてるうちに放課後になり、生徒が練習に向かう中、彩鈴は先生の方に向かっていた。

「失礼します。龍野白奈先生に用があってきました」
「うん。ありがとう。わざわざごめんねー。ということで、これ生徒会室に運んでくれない?」

 白奈に頼まれたのは、重そうな資料が入っている段ボール。それと、2つの地球儀である。

 これは二往復しろってことですよね。一度では無理です。

 じゃあ頼むね。と言って、白奈は去って行った。

 去っていく姿を見てから、彩鈴は小さく気合を入れ、まず最初に地球儀を手に持つ。




*****




「次はこれですね…」

 重そうなこの資料。段ボールの底ぬけるのではないかと、そう思ってしまう。
 まあ…大丈夫ですよね。底はガムテが貼ってあるし…。
 小さく声を漏らしながら、荷物を抱える。

 ……これは重い。思った以上に重い。一度下ろしたら、2度と持ち上がらない感じですね。

 思わず顔がこわばってしまう。

 一気に持っていきますか…。

 白奈の準備室から出て、生徒会室に向かう。

「ふぅ…。由希さんには悪いことをしましたかね…」

 軽くよろよろと、つたない足取りで歩く。
 あぁ…そう言えば階段下りなければ…。足元が見えにくいです…。ですが、上るよりはマシですよね。

 そう思って下りはじめた時。

「――ッ! ――!!」
「ん?」

 誰かの声? なんか叫んでるのでしょうか。体育祭の練習…では、ないですね…。
 何だろうと思い、階段を下りての直ぐ曲がり角で、顔をのぞかせる。その瞬間、
 
――ドンッ

 と、向かってきた人物と思いっきりぶつかった。

「きゃっ!」
「っ!」

 お互いに後ろに転んで、しりもちをつく。

「っー…。あ、すみません! 大丈夫ですか!?」

 彩鈴が慌てて起き上がり、相手の方を向けば、そこに居たのは。

「彩鈴…」
「…朱理さん?」

 軽く目に涙を浮かべた、朱理だった。

「ど、どうしたんですか…?」
「な、何でもないよ。そ、それより荷物散らばしちゃったよね。ごめん拾うよ」
「あ、いえ、そんな…」

 2人で慌てて、散らばった資料を段ボールに入れていく。
 中身が少しバラバラになってしまったか…。と思っうが、クリップで止めてあったり、表紙に番号が書いてあったので、きちんと入れられた。

 先生、準備周到ですね。

 彩鈴がそう思いながら、全部の資料を入れ、それを頑張って持ち上げる。

「……彩鈴、少し持とうか? 重そうだし。足元見えないだろうし」
「え…。いえ、そんな。悪いですし、」

 大丈夫と言う前に、もう朱理は荷物を半分持っていた。
 おかげで軽くなった荷物を、彩鈴も抱える。先輩に荷物を持たせる、というのはどうも気が引けるが、この人の性格上、曲げないなと諦め、小さくバレなように溜息を吐く。

「そういえば、朱理さんは体育祭の応援練習は…?」
「あー…少し生徒会の仕事で…」
「はあ…」

 これどこ持ってくの? と聞かれ、生徒会室と言えば、少し躊躇ってから、了解と首を縦に振る。
 彩鈴がなんで居るのかは、朱理は聞いてこなかった。きっと、これを抱えてる時点で、なんで居るのかが分かったのだろう。
 生徒会室は思ったより近くで、少し歩けば、教室に着いた。
 2人でテーブルに資料を置いて、同時に肩を回す。

「……あのさ、彩鈴」
「はい」

 なんでしょう。と聞けば、朱理は少し目線を泳がせて、暫くしてから口を開いた。

「自分がずっと、探していた相手が、自分のことを覚えていなかったら…どうする?」
「え?」

 朱理は少し真剣な表情をして、彩鈴を見ていた。
 先程、泣きそうな表情をしていたのと、関係があるのか…。
 思わず悩んでいれば、朱理は小さく吹き出してから、何でもないと笑みを浮かべる。

「ちょっと気になっただけだよ」

 それだけ言って、朱理は手を振りながら教室を出て行った。



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