君だけは知っている

 五月も、中盤を過ぎた頃。衣替えの季節となりました。
 あたしは、寒さに少し弱いので、長袖Yシャツを着ているんだけど。中にはもう半袖の男子もちらほら。でも、まだカーディガンを着ている女子もちらほら。見てると季節が違う。まぁ、その面白みも、衣替えの時の醍醐味、ということで。

 そして、まあこの時期になると、目に入るのが服装の乱れというやつらしい。
 あたしは、委員会で集まった時に、火燐先輩にそう言われて、慌ててスカートの丈を戻した。それを輝先輩に見られて、めっちゃ笑われたんだけどね。

「兎に角、その服装チェックを、します」
「というと?」

 あたしが聞けば、どうやら校門に立っての服装チェックだそうだ。まあイメージで言えば、風紀委員みたいな感じ。それがこの学校にはないので、生活委員が毎回やっているんだそうだ。
 あぁ、だから先輩みんな服装がちゃんとしてるんだ。焔真先輩とあっちゃんはいつもどおりだけど。あ、でもよく見たら焔真先輩ピアスしてない。抜かりなかった。

「まーでも今回限りみたいなもんだから、意味があるのかって言われたら、ないんだろうけどね」

 言っちゃったよこの先輩。

「基本的に緩いからさー、この学校。でも荒れてないのは凄いところだよね」

 そう言ってケラケラ笑う先輩に、思わず苦笑いしてしまう。
 確かに、他校だったらアウト何発も食らってるんだろうなーって、感じだもんな、あたしの格好。スカート短いし。あと過去には髪の毛で怒られたことある。ははっ、自毛だっての。それを親に説明させたから、やっぱり日本人の金髪は珍しいらしい。
 とまぁ、それは置いといて…。

 今現在、あたしは玄関で立ってます。各学年ごとに、それぞれの学年を担当する、ということであたしとあちゃんは1年生を担当してるんだけど…。

 2、3年生はこの時期に検査があることを知ってるから、きちんとした服装で来るんだけど、1年生の大半はそれを知らない。
 つまりは、というと…。

「ゆう君…。腰パンとネクタイの緩み、シャツのボタンの開けてる数…。ほとんど引っかかってるよ…」
「うぎゃあっ! 今日服装検査の日なの!?」
「そうだったみたいだね」
「えー! ヤダー! 俺めっちゃ引かれちゃう!」

 そう、この検査に引っかかると、成績が下がってしまうのだ。だから、3年生は特にキチッとしている。だって、彩兎先輩なんてもう仕事してない。あ、焔真先輩に怒られた。

「ゆっきー、何とか誤魔化してくれない…?」
「無理だよ、これバレるとあたし火燐先輩の餌食になっちゃう」
「うん。無理言ってゴメンネ」

 ゆう君が諦めた顔をした。うん、分かってくれてあたし嬉しい。
 そんなゆう君の隣に、げん君がやってきた。

「あ、げんげ…ってちゃんとした服装になってる!」
「あぁ…学校行く途中の生徒が、ほとんどきちんとしてる格好だったから。そういう時期かと思って」
「そんなー…途中までいつも通りだったくせに…」
「はい、げん君はオッケーです」
「コノヤロー!」

 ゆう君がぽこぽこと怒るもので、思わず笑みがこぼれる。
 そんな服装検査をしているあたし達だけど、我が学園は体育祭に向けて、学校中が湧き上がっていた。

 どうやら、この時羽学園の体育祭は、三大祭りのうちの一つらしい。
 一つはこの体育祭。
 それと9月の中盤にある時羽祭。まあ文化祭というやつ。
 もう一つは1月の学科別発表会。これは学科ごとに分かれて、それぞれ1年間の成果を発表する場らしい。堅苦しいものではなくて、祭りのようなものだそうだ。
 それに、この学校は学校も大きいので、行事も盛大に行うらしい。そして体育祭も、その一つ。
 4クラスそれぞれ分かれ、各学年と組んで優勝を目指す。総合優勝と応援優勝。それと体育祭には関係ない、色々な対抗リレーがあるらしい。クラス対抗、部活対抗、そして委員会対抗。クラス対抗はかなりのガチ勝負だが、部活と委員会はパフォーマンスも目玉なんだそうだ。

 こうやって聞いていると、とても体育祭に興味が出てきた。

 そして今、全校生徒が体育館に集合している。とても、人数が多いです…。人口密度、半端ねえ…。
 もう少しで梅雨に入るせいか、気温も高くなってきてるから…。暑い。
 なんて思っていれば、体育館の前の方で水憐先輩がマイクを手に持っている。

『えっと、ではこれから体育祭の軍議決めを行いたいと思います』

 水憐先輩がそう言えば、一気に盛り上がる館内。あたしは、またテンションについていけてないけど。なんか、前もこんなことあったような。あぁ、SBの委員会決めの時だ…。
 あたし一人がまた置いてかれてる気分の中、話が続けられる。



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