君は考えたこともないんだろう

 次にやって来たのが、技術科。
 ここからは、他学年とも合同で行うらしい。だから、こうやって見学してみると、いろいろな学年の人が集まっていて、とても面白い。

「ここでは情報、発明が主になってるのよ」
「そういえば、先生は学科はどこなんですか?」
「実は、私はここなのよ」

 ここ、ということは技術科か…。凄いなあ、先生そんなイメージってあまり無かったんだけど…。

「教科は地理だけど、学科はこれなのよ」

 結構器用なのかなー、と思いながら見ていると、天川さんが居た。

「あれ、どうしてここに?」
「あぁ、彼女はもう決まっているようなものだからね。見学しないで、もう授業始めてるのさ」

 そんな彼女は、空中に浮かんだようなパネルを、それをものすごい速さでタンピングしている。
 先生が言うには、あれが彼女の能力らしく、だからこの学科に決まっていたそうだ。

 ふうん…最初から決まってるって、つまんなくないのかな…。

 そう思ってみたけど、彼女の表情を見ていれば、あたしの考えが違ったのに気づく。彼女は、一見分かりづらいけど、とても楽しそうにしていた。
 好きなことと、得意なことが一緒って、良いなあ…。思わずそう思ってしまう。

「じゃ、次行こうか」



*****




 続いて来たのは、医療医学科だ。
 一見聞くと、とても頭が良さそうな人ばかり、という感じだが実際はそうではないらしい。確かに、そういう職に就きたいから、この学科を選ぶ頭のいい人も多い。
 けど、実はここに居るのは能力面、血筋などが多いらしい。その証拠に…。

「こらあ! 千束サボるな!」
「サボってませんよ休憩中でーす」

 朱理先輩とセットでよく見る、千束先輩が居た。

「それに羽鳥! お前同じグループだろ! 監視してろ!」
「じ、自分の所為っスか!?」

 桜嵐先輩も一緒だ。
 隣にいるゆう君とげん君が、複雑な表情してる…。確かに、先輩のこんな姿見たら誰だってこうなるか…。そう考えるとあれだな、紅煉君パネェな…。
 そんな、少し遠い目をしているあたし達に、先輩二人が気づいた。

「やあ、北村ちゃん」
「こ、こんにちは」
「優羽さんも源輝さんも見に来てたんスねー」
「はい…」

 相変わらず、後輩にもさん付けなのなぁ…。と思いながら、まだ哀れみの目で見てる二人と先輩のセットを見る。

「てか、千束先輩は分かるとして、何で桜嵐先輩が?」
「自分っスか? 自分は能力的な意味で…」

 そう言うと、彼は手の平に種が有るのを見せる。そしてそれをギュッと握って、手を開けば、そこには成長した植物が。

「これ、薬草の一つなんスよ」
「へぇ…」

 皆で興味津々と見つめる。

「それで、こっちにも植物があって…」

 さっきとは逆の手の平に種が乗ってあり、そしてそれをさっきと同じようにする。すると、さっきとは違う植物が生えた。
 そして、それを桜嵐先輩は、グシャッという感じで、手のひらを合わせて手を握る。

「こうして、二つを合わせる…」

 すると。
 桜嵐先輩がそう言うと同時に、手を開いた。そこには、グシャグシャになっているはずの植物が、何故か一つにまとまって、そこに有った。

「す、凄い…!」
「でしょ?」

 思わず感心すれば、先輩はへらっと笑みを浮かべる。まるで手品みたいだ…。

「品種改良みたいなもんスね。そしてそれを、もう一度ぐしゃっとして…ぐるぐる煉る」

 そうすると、桜嵐先輩の手が淡く光っているように見え、そしてその光が収まると同時に、掌を開いた。

「薬の出来上がりっス」
「すげえええええ!」

 ゆう君と一緒に、目を輝かせて思わず叫んだ。桜嵐先輩も、照れて笑みをこぼしている。
 先輩ってこんなことも出来るんだなあ、と思わず見入っていれば、先生がもう時間とのこと。

「先輩ありがとうございました」
「いえいえ、しっかり決めるんスよ」
「はい!」

 最後に桜嵐先輩がウインクしながらそういうので、思わず笑みがこぼれた。




「じゃ、次は体育科ね」
「お、待ってました!」

 先生の言葉に、ゆう君が反応する。

「もう決めてたの?」
「うん。俺、バスケが続けたいから、体育科に入って、そういう道行きたいんだ」

 ゆう君が、少しいつもと違う表情を見せながらそういうので、思わず呆気にとられてしまった。
 そっか、ゆう君はそういう道を目指しているわけなんだ。
 そういう夢があるって、良いなあ…。




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