君は考えたこともないんだろう

 普通科で連れられてきた所は、本当に普通の教室。
 どうやら、このコースは本当に一般的な、普通に授業を受けるコースらしい。私たちとそんなに変わらない。だから、一番人数の多いコースだそうだ。
 各学年約半分の人数が居る為、各2クラスずつ使う。授業はもちろん学年別だ。

「このコースは、特別なことは無い代わりに、教科は多いからね。教科書代は結構かかるかも」

 白奈先生がそう言えば、皆は先輩達の方をチラチラと見る。あたしもつられて見れば、確かに時間割には、結構の科目が書かれている。基本的な科目はもちろん、家庭科や体育、芸術とか。
 それでここは、まだ将来が決まっていない、進学を希望する人が多いらしい。

「大体分かったかな? じゃあ、次は特進科の塔に行くよ」

 白奈先生の言う塔とは、コースごとに分けられている塔のことだ。流石デカイ学校なだけある。だから、ここは普通科の塔。
 一応全部の塔に通じる渡り廊下がある。だから、この普通科は一番人が行き来する場所でもあるらしい。



*****



 しばらく歩けば、特進科の方に着いた。
 ここは普通科と似ているが、少し頭のレベルが上がる。何故なら、こちらは国公立の大学や、有名私立大学を目指す人が希望する科だから。
 時羽は大学へのエスカレーターもあるが、時羽の大学ではなく、別の大学を目指す人が多いのが特徴。
 もちろん、時羽大学に希望する人も居るらしいけど。

 まぁ、現に授業を見学してみると、レベル高いのがよくわかる…。

「あ、早緑先輩じゃね?」

 ゆう君が指差すところには、確かに早緑先輩が居た。へえ…先輩って、頭良いんだなあ…。

「ねえねえゆっきー知ってる?」
「ん?」
「早緑先輩って、実は元ヤンだったらしいよ?」
「なっ…!」
「ななななんだってー!!??」

 思わず聞こえた叫び声に、皆の視線がとある方向に向かれる。
 叫び声を出したのは、紅煉君だったらしい。そう言えば、この人早緑先輩の後輩だったわ。
 んで、さっきの叫び声は当然クラスの先輩たちも聞こえている。そして先輩たちはこちらを向いている。

 もちろん、早緑先輩もだ。

「紅煉君、なんで居るの…? 確か別のクラスに…」
「隣のクラスに早緑先輩居なかったから! 見に来ちゃった!」
「来んな馬鹿!!!」

 紅煉君の言葉に、早緑先輩が叫び返す。その光景に、クラスがドッと笑いが起きた。
 
「そんな先輩…。先輩はドルヲタって個性があったのに、まだあったんスか…」
「おめぇいい加減にしろ!!」

 先輩の辞書が紅煉君の顔面にヒットした。ナイッシュ。
 そして倒れた紅煉君の方に近づき、辞書を拾う。あ、自分でやるんだ…。それと同時に、紅煉君が起き上がった。

「いてて、先輩酷いっスよ…」
「自業自得だろーが」

 倒れている紅煉君に対し、立って腕組んでいる早緑先輩の差が激しくて、威圧感ハンパない。まぁ先輩が大きいってのもあるんだろうけど。
 確かに、よく考えてみれば、この先輩口が悪いというか、そういう雰囲気持ってたなあ…。と、先日のかくれんぼの時を思い出した。

「それにシスコンだから、先輩キャラ濃すぎ…」
「マジでぶっ殺すぞお前」

 黒い笑顔で言いながら、先輩は勢いよく紅煉君を踏んだ。
 踏んだ……。大切なことなので、2度言いました…。

「おーい、早緑授業再開してもいいか」
「あ、はい。直ぐに座ります」

 足をどけて、先生の方に顔を向けながら言う姿は、さっきまでと違って真面目な感じである。
 人って、こんなに変えられるものなのか…。

「奏架に言ってやろ…」
「狐紀くん、悪いけど元ヤンの話、ゆっきーや狐紀くん以外は皆知ってるよ」
「ななななんだってー!!??」
「孤紀てめぇさっさと帰れ! ボケ!!」

 コース選択より、先輩後輩のこの光景の方が、印象深かったなんて、そんなまさか…。



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