白紙のプリント

 勉強会を続けて、各自でプリントを解いていれば、カランとシャーペンが転がる音がする。そちらを見れば、十知君がうつらうつらとしていて、頭が軽く揺れていた。眠いのかな…。げん君とゆう君も少し十知君をじっと見ている。まあ彼が居眠りだなんて、そんなところ見たことがないからなんだけど。
 3人でじっと見ていれば、ガラリと教室の扉が開いた。

「申し訳ありません、少し用事が伸びてしまって…」

 そう言って入ってきたあっちゃんの目線は、十知君に移る。

「酉海さん…?」

 あっちゃんがぽつりと呟くと、十知君はハッとして目を開いた。

「す、すすすすみません! いつの間にか居眠りを…!」
「いやいや、十知君疲れてるの? 大丈夫?」

 ゆう君が笑いながら答える。それに十知君も苦笑いで返す。

「最近夜更かししてまして…」
「勉強?」
「はい」

 偉いなあと思う。そう思っていると、ゆう君が真面目ぶんなくそう! と叫びながら十知君の頭をぐしゃぐしゃとする。それに十知君がうわあ! とか叫ぶから、思わず笑みがこぼれた。
 
「それでは、現代文しますか?」
「現代文って勉強する意味ってあるの?」

 ゆう君が歪みねえ笑顔で言ってきた。いや、しかし気持ちはわからなくもないよ。国語だもんね。日本語だもんね! 暗記の科目ではあまりないもんね!
 しかし、ゆう君の言葉にあっちゃんがバンッと机を叩く。急なことにあたし達全員がビクッとした。

「する意味がないですって…? 西野さん、それは本気で言っているのですか…?」
「え、あの…アリスちゃん?」

 ゆらり、という効果音がぴったりであろう、あっちゃんがそんな動きでゆう君の机の前に移動する。

「良いですか!? 現代文とは日本の文学を学ぶ際に、一番大切なのです! 授業でありながら物語を読め、そしてその登場人物のことを考える! 他の科目にこんなことが出来ますか!? 日本人は相手の心を感じ取るのがうまい国、つまり現代文は一番身近な科目なのです!」

 急に多弁になったあっちゃんに、あたしたちはぽかんと見ていた。うん、今まであんなに熱弁しているのを見たことないから…。

「そして暗記ではないとおっしゃりましたが、違うのです。現代文のテストの20%は漢字問題。つまり漢字だけでも覚えれば、20点は確実に手に入る。これを逃す手はありません」

 そして再びバンッという効果音付きで、何かを机に叩きつけた。どうやらプリントだ。テスト範囲の。
 そこのプリントには漢字問題が書いてある。

「ここのプリントに、確実に出るであろうものを厳選しました。これを覚えれば20点は確実です。テストまで2日間しかありません。ここまで来てしまえば、他の文法覚えるよりこちらの方が確実です」

 さあ、といい笑顔でプリントを差し出してくる。

「明日の放課後、覚えたかテストしますので…。今日中に覚えてくださいね」

 ゆう君とあたしの悲鳴が学校中に響いたとか、響いてなかったとか…。




↓おまけ(会話文)


*****



「だから、聖徳太子のは法隆寺と斑鳩宮って言ってるでしょ」
「うううううるさい! 分かってるわ!」
「分かってないから間違ってんでしょ」
「ぐぅ…! それより紋、お前は大丈夫なの…!?」
「え、朱理ちゃんと一緒にしないで。もう授業中に全部覚えてる」
「くっそこの天才やろおおおおお!!」



*****



「違ぁう。ここはこの数式を使うって、何度…」
「焔真の教え方が悪んじゃないの?」
「彩兎! 余計なことを…!」
「違う違う! 私が出来てないだけだから!」
「じゃあさっさと覚えろ」
「うぅ…」
「火燐頑張れ…」
「輝君、君もね?」
「うぃっす…」



*****



「さああと2日ですよ…? 次最悪な成績とったらどうなるか、分かってますよね…!?」
「み、みみみ水憐さん!? ちょっとその水で出来た鞭しまってくださいっス!」
「ええい! あんたが真面目にテスト受ければこんなことしません!」
「水憐さんは水憐さんで勉強が…」
「もう見直しで十分です。ほら、さっさとやりなさい。大丈夫、人間2日間寝なくても死にません」
「ちょっ、豪波さぁぁぁん!!」
「水憐さん! 豪波さん、寝ちゃってます!」
「豪波ぁぁぁぁ!!」



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