幸福フレーム

 皆でごちそうさまと手を合わせたあと、ジャンケンで片付けを決め、ゆう君とげん君、焔真先輩と豪波先輩が片付けを行っていて、残りの人たちは色々と話をしていた。
 そんな中、あたしは居間で座っているんだけど…。隣で座っているのは、彩兎先輩だった。
 先日あった出来事以来、彩兎先輩とかかわるのが怖くなってしまった、というのに、今隣に先輩が居る。こっち見てる。怖い。冷や汗だらだら出てるひいい!
 先日のことを謝ろうとしたんだけど、いきなり謝ってもあれだし、それに何か、対して学習もしてないくせに謝るだけってのも、きっと先輩は嫌いだろうし…!

「ねえ」
「ふぁい!!」

 噛んだ! そう思っていたら、彩兎先輩が吹き出した。な、泣きたい!
 軽く恨めしく見ていれば、彩兎先輩は口元をぬぐい、あたしの方を見てくる。

「ねえ、何か僕に言いたいことでもあるんじゃないの?」

 あ。謝ってはくれないんだ。
 なんて軽く図々しいことを思いながら、あたしはどうしようかと悩む。だって、いきなり謝るのもあれだし、さっき思った通り、だから…。
 あ、

「あの! 先ほどの話にあった、授業のコースを考えておいてって…。あたしよく分からなくて…」
「え、なに。逆に問うけど、今まで何も知らなかったの?」

 地雷踏んだ気がした。
 もっと怒られてしまったらどうしよう…! いや、怒ってはいないんだと思う。きっと嫌われているのだと思う。
 あ、もっと悲しい…。

 あたしが軽くショックを受けていれば、彩兎先輩は小さく息を吐いてから説明してくれた。
 どうやらGWをあけてから、午前の4時限は普通に今までの授業。午後の授業がそのコース別に分かれて行うらしい。コースというか学科は次の通りで、
・普通科(本当に一般的な感じ)
・特進科(有名大学進学希望の人とか。ここでも中で文系理数系と別れたりするらしい)
 この2コースはまだ将来がはっきり決まってない人、進学希望の人たちが多いらしい。普通に勉強するから学年別で行う。それが例外になるのが次のコース。
・体育科(体を動かすのが好きな人、選手になりたい人たちが集まる)
・芸能芸術科(将来は役者や歌手などのスポットライトを浴びる仕事に就くことが多いらしい)
・技術科(物を作る、コンピューターを扱う。これは個人個人で行うことが多いらしい)
・医療薬学科(将来そういう系に進みたい人たち)

「もうそれぞれ決めてしまうんですね…」
「まあね、この学校の強みはそういうのもあるし。敷地が広いから、そういうのを自由に使える建物がある」
「じゃあ先輩たちはそのどこかに入ってるんですか?」
「いや、これの他にもう2つある」

 1つ目が専門知識修得科。そういわれてもついていけない。頭にハテナばかりが浮かぶ。あたしがそんな顔をしていたのだろう。再び吹き出した先輩に軽く怒れば、まったく反省していないような声色で謝られた。

「この専門知識修得科っていうのは、能力を研究し、それを生かすことに進んでいく人たちが入るんだ。因みに、異能者じゃない人も入っていたりするよ」
「へえ…」

 もう1つが、戦闘科。

「戦闘科!? なんですかそれ! いかにも危なそうな…!」
「これはもう完璧に進路先…就職先が決まる」

 因みに、専門知識修得科の人も、その戦闘科の人と一緒に進むことが大半らしい。そしてその戦闘科も異能者じゃない人も大半だとか。

「じゃあ彩兎先輩は?」
「僕はその戦闘科。因みにいうと、火燐ちゃんや焔真、輝君と水憐君も同じ」

 ひえー。生活委員勢ぞろいなわけだ。

「就職先ってどこになるんですか?」
「んー。これくらいは知ってるかな。時羽依頼所」
「あ、はい。確か警察も一緒になってやってる、何でも頼めるところですよね…」

 って、ちょっと待って。そういえばこの学校の名前は何だったか。
 時羽学園である。

「ご察しの通り、依頼所とこの学校はつながっているんだ。そして、その2つの学科を選んだ人たちはその時羽依頼所に入りまーす」

 そうだったのか…。いっきに頭がついていた気がする。

「で? 由希ちゃんはどうするの?」
「どうすると言われても…」

 今知ったばかりだし、どうするべきなんだろう。あっちゃん達はどうするんだろう。
 あたしが悩んでいれば、彩兎先輩が深ーい溜息を吐いた。

「あのさ…この間、言ったよね。僕は何も出来ないくせに何も努力しないのが嫌いって」

 ビクッと体が反応した。お、覚えてる…。

「正直な話、僕は君が努力してるようには見えないし、それに人任せになりすぎだ。君は、彩鈴ちゃんが居ないと何もできないの?」

 そうかもしれない…。あたしは今、あっちゃんに頼りすぎているのかもしれない。かもじゃない、絶対そうだ。

「あの、彩兎先輩…」
「ん?」
「特訓って、先輩はどのようにやったんですか?」

 あたしがそう問えば、彩兎先輩は小さく笑みを浮かべた。

「そうだなあ。僕は模倣だから、兎に角皆の技を真似してたなあ」

 特訓なんて、それぞれ自分に向いてることをしなければ、成長しないよ。
 そういって彩兎先輩はチャンネルを手にとった。

「あ、そうだ」

 彩兎先輩が、あたしの方に振り向く。

「火燐ちゃんや輝君は、的を作ってそれに当てるようにしてたよ」

 そういって、再び前を向いた。
 ………先輩、何だかんだでヒントをくれるんですね。そう思いながら、テレビの方に視線を戻した。

「コース選択、そこまで心配しなくても大丈夫だよ」
「え?」

 彩兎先輩の少し優しげな言葉に、あたしは少し驚きながらそちらを向いた。

「GW中に学校で合宿がある。異能者や戦闘科の人たちはね。そこで自分のことを知るという手もあるから」

 あたしが「へぇ」と息をこぼす。すると、ちなみに。と彩兎先輩は口を開いた。

「1年生は強制参加だから。それで僕たちは用事で出れないから、頑張ってね」

 最後に、ぽんと軽く頭を撫でられながらそう言われ、思わず頭に手を乗せた。
 そっか…強制か…。頑張らなきゃ。

 しばらくしてから、あたし達は先輩たちの家を後にし、それぞれの帰路についた。
 今日は色々なことを知れたし、改めて自分のことを見つめ直さないといけないんだなって、思えただけでも上出来かなって…。
 もっと頑張ろう。改めてそう思った。



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