コンビネーション
と、スタートしたはいいけど、きっとあっちゃんには直ぐに見つかってしまう。という事で、裏をかいて、あえて鬼の近くに隠れてみよう。
あっちゃんは周りを見渡すことはできるけど、けっして透視はできない。例えば建物の中にいたとしても、窓さえあればそこから目を移すことはでき、そこから視野を広げることはできる。しかし、窓などなく、壁など邪魔なものがあれば、確か見えないはず。だったら、何かの中に隠れたら、逃げれる…と、思う。
「…ひゃく」
あっちゃんが数え終えて、火燐先輩とあっちゃんが振り向く。
「もういい……」
すると、そんなあっちゃんと火燐先輩はポカンとした表情で、目の前の光景を見ていた。そんな二人の視線の先、そこには
体育座りしている、ゆう君と彩兎先輩が。
「えと、西野さんと…」
「彩兎見つけた、と捕まえた?」
ぽん、とそれぞれタッチする。
「わー、見つかっちゃったー」
「流石アリスちゃんだー」
「……って、なんで隠れてないんだアンタ等ー!!」
棒読みも良いところである。
思わず隠れていた所から飛び出した。そして、ツッコミの声はあたしだけではなかった。もう一人居た。
あたしと同じようにツッコミを入れながら、上から飛び降りてきた人は輝先輩だった。
「あ、由希さんと日暮先輩…」
「あ、」
「捕獲っ!」
「ぎゃあああぁぁぁ!!」
火燐先輩が獲物を見つけた獣のように、あたし達に素晴らしいスタートダッシュで、追いかけてきた。
必死に逃げるも、直ぐに捕まってしまうのは、言わずもかな…。
「んだよもー! 火燐と南がキチンとツッコミ入れねえから、つい飛び出しちまったじゃねえか!」
輝先輩の言葉に首を縦に何度も振る。
「だけど、西野君と彩兎なんで隠れなかったの?」
「え?」
火燐先輩の言葉に、二人は同時に声を漏らし、同時に口を開いた。
「だって隠れたら可愛い火燐ちゃんの顔を眺める時間が減っちゃうじゃないか」
「だって隠れたら可愛いアリスちゃんの顔を眺める時間が減っちゃうじゃないか」
「だったら参加すんな!」
「しかも二人して同じことを言わないでください!」
そしてそのまま、彩兎先輩は火燐先輩の肩に腕を回し、そのまま帰ろうとする。それを輝先輩が必死に止めていた。
「いやあ、先輩たちも仲いいね」
「西野さんは早く離してください」
ゆう君はあっちゃんを後ろから抱きついていた。
それをあたしがビリっと剥がし、二人の間に入る。
「よし!早く皆を探そ!」
火燐先輩の言葉に、あっちゃんが頷いて、あたしたちは二人の後に続いた。
そう言えば、輝先輩はどこに隠れていたのかと問えば、あたしと同じく裏をかく感じで、天井付近に隠れていたらしい。
どうやって隠れていたのかは、聞かないでおこう…。
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