はじまりはじまり
少年に案内をされながら、そちらへ向かえば、とある家のベランダの柵にこの少年より幼い、見たところ四歳くらいだろうか、男の子がぶら下がっている。
な、ななな何をしているの!
あたしは少年をその場に下ろし、急いで男の子の家の中にお邪魔する。植木とかを全て飛び越えて、彼のしたに向かう。不法侵入だとかは今はスルーして欲しい。
「何をしているの! 危ないでしょ!」
あたしが慌てて男児の下に回り込んだところで、男の子の手がずるっと滑ったのがわかった。
落ちる、落ちてくる。
体が勝手に動いていた。少し腰を下げて、腕を伸ばして構えれば、そこに目掛けて男の子が落ちてくる。四歳児の体重が重量に従って落ちてくるのだから、それなりの衝撃が来るはず。
あたしがその衝撃に備えて、思わず目を閉じると、奇跡的にあたしの腕の中に収まった感覚がした。
「……ん?」
あれ? 衝撃は?
あたしがぱちぱちと瞬きをすれば、腕の中にいた男の子も目をぱちぱちさせている。二人して瞬きをしている、なんとも不思議な空間になった。
「お姉ちゃん、ありがとう!」
「あ、あぁ。どういうたしまして」
あたしがハッとして男の子を降ろせば、少年が涙目でお礼を言ってきた。見た感じ、とても似ている。兄弟だったのかな。
あたしが彼らに手を振りながら家を出れば、どっと息が漏れる。
正直言うと、あたしはあまり納得行かないというか、理解できないというか…。自分自身かやったことなのに、全く分からないのだ。
だって男児が転落したのを受け止めたのよ? 普通体のどこかしら痛めるはずだ。四歳児の体重が重量に従って落ちるのだから。普通は。けれど、あたしはそんな痛めている所なんて無い。ぴんぴんしている。
私の体は、いつの間に超合金になったのか。
そういえばお昼ご飯食べてない…なんて、途中から考えることを放置していれば、さっきまで歩いていたところに戻って来た。
お腹すいた…。
「あの…」
「え?」
小さく溜息を吐いていると、後ろから声がした。慌てて振り返ってみるも…。だ、誰もいない…!? ほ、ホラー!?
「下です、下。視線を下におろしてください」
「へ?」
下から声が…。言われたとおり視線を下にゆっくりとおろす。
「きゃああぁぁ!」
そこには人が立っていて、あたしを見ていた。何だろう、今日私は後ろに人が立っているのが多い日なんだろうか。
急に人が現れたため、思わず叫んでしまい、尻餅をついてしまった。は、恥ずかしい…!
突然のことに驚きながらあたしが謝れば、背丈の低い女の子が笑みを見せながら、気にしないで良いと言ってくれた。何て優しいのだろう…。
そして、そのまま腕を差し伸べてくれて、好意に甘えて腕を伸ばす。
小さな体に合わず、力は結構あるようで、あたしはスクッと立ち上がることが出来た。
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