どの方法なら勝てるか

 由希ちゃんが吹き飛ばされ、急いで駆け寄ろうとしたとき、今度は天井から誰かが壁を壊しながら降ってきた。
 明るい、オレンジ色に近い茶髪のポニーテール。どう見ても同級生で仲の良い朱理だった。
 彼女は廊下に足を着くと、未だに降ってくる瓦礫を、彼女の能力である炎で、全てを塵にしていた。そんな彼女の表情は笑み。

「やあやあ生活委員の皆さん。お元気ですか? なーんて」

 彼女はヘラっと笑みを浮かべ、そう言葉を続ける。

「朱理どいてよ。私の後輩があんたの後輩に吹っ飛ばされたのよ」
「あははっ、確かにアレはやりすぎだよね。でも、彼女が獲物になりそうな雰囲気を出してたんじゃない?」

 彼女の表情は少し冷めているように見えた。先週、由希ちゃんに見せていた笑みを見せていたとは想像ができない。
 彼女は努力をしない人を嫌う。由希ちゃんは確かに、まだ能力に目覚めて日が浅い。だから能力がうまく使えない。そして見た感じ、まだ能力の練習はしていないように見えた。
 だからかな。朱理の由希ちゃんに対する印象はあまりよくないように写っているように見える。

「それに、彩鈴にもね」

 彩鈴ちゃんの名前を聞いて、皆の視線が彩鈴ちゃんに移る。彼女はいつも通り無表情でいる。そして、朱理はニッと笑みを浮かべた。

「話はこれくらいにして、やろうか!」

 そう言った瞬間、皆が身構える。
 そして、朱理の能力の炎が勢い良く私たちに迫ってきた。私達はそれぞれ何とか避けて、直ぐに体制を立て直す。

「火燐!」
「分かってるよ!」

 指示出せってんでしょ! でもねえ、朱理の圧力って半端ないのよ! 兎に角…。

「彩兎! 由希ちゃんが心配だから、何とかして向こうに行って!」
「えぇ、無茶ぶりだなあ」
「良いから行く!」
「はいはい」

 彩兎は眼鏡をかけ、走りだした。

「先輩ですかね、通しませんよ!」
「いやいや、そこは先輩に道を開けてもらおうか」

 彩兎はそう言うと、右手に水の塊を作り、朱理の周りにできた炎の壁に投げつけた。

「なっ!」
「もう少し火力強くしとけば良かったね」

 彩兎はそのまま、火の消えた部分を走り去った。因みに火は完全には消えていなかったが、華麗にジャンプをし、うまく着していた。流石陸上、高跳び選手。

「焔真! そのまま続いて!」
「了解」

 すぐさま焔真が彩兎のあとに続いて、炎から抜け出した。
 朱理はその様子を見て、ため息をこぼす。

「あーあー、二人も抜かされちゃった。玄眞に怒られちゃうじゃん」

 そう言いながら、私たちの方を見て、ニッと笑みをこぼす。

「まあ、その分、集中できるんだけどね」

 私達はもう一度身構えた。



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