どの方法なら勝てるか

 そして今日。学校に来て、げん君によってSBがあることを思い出され、放課後になりました、あたしにとっての魔の火曜日。
 そんなあたしは今現在、緊張で心臓が口から飛び出そうです。

「んな緊張すんなって!」
「あいたっ!」

 輝先輩にバシッと力強く背中を叩かれる。結構痛い…。あたしが背中を摩っていれば、あっちゃんの姿が目に入る。
 何か、朝から気になってたけど、雰囲気って言うか…。様子が違うように思える。あっちゃんに声をかけて、そちらの方による。そしてあっちゃんの顔をよく見れば、うっすらと目の下に隈が出来ていた。

「あっちゃん、その隈どうしたの…?」
「あ、バレてしまいましたか…。一応隠したと思ったのですが…」

 あっちゃんが少し苦笑いしながら言う。朝はあまり気にしてなかったけど、よく見ると隈が出来てるって分かる。ファンデーションで隠してきたのかな。本当は化粧はいけないんだけどね。それくらい許されるよね、きっと。

「それよりどうしたの? 隈ができるなんて」
「今日、実はオールしてしまいまして…」
「え!?」

 絶対しない人だと思ってた…。

「何してたの…?」
「少し、特訓を」
「特訓…?」

 はて、何のことだろう。
 そう疑問に思っていると、あっちゃんは火燐先輩に呼ばれ、そちらの方に向かう。

「そう言えば、あっちゃん大丈夫かな…」

 昨日、先輩に言われていたあれ…。

「由希ちゃんは、自分の心配したほうが良いんじゃなーい?」
「うわっ! あ、彩兎先輩…」

 後ろから声かけられ、先輩はあたしの顔を見て、にっこりと笑みを見せる。う、この黒さを含んだ笑み、未だに慣れません…!

「先週、自分はどうだったか、忘れてるわけじゃあないよね?」
「は、はい…」

 未だに笑顔の彩兎先輩に、ビクビクしながら首を縦に振る。
 すると、先輩は言葉を続けた。

「僕たちだって余裕があるわけじゃないんだ。それを覚えてもらっていないと、困るよ?」
「はい…」

 そうだよ、先輩達だって余裕なワケじゃない。下手すれば大怪我するかもしれない中、先週はあたしを庇いながらやってくれてたんだ。
 今週もそう甘えるわけにはいかない。
 私はギュッと拳を握り、先輩の顔を見る。

「頑張ります…!」
「ん、よし」

 先輩は薄く笑みを見せ、火燐先輩の方に向かった。

「北村。何かあの兎に言われなかったか」
「焔真先輩……って、兎?」

 あたしがポカンと口を開けば、先輩は盛大にため息を吐いた。

「彩兎。あいつ名前に兎付いてるだろ」
「あぁ…そうですね」
「それに、兎ってどういう動物か知っているか?」
「え…? ただ、可愛いとしか…」
「万年発情期だ」

 一気に兎への愛が冷めた気がします。

「それと、彩兎先輩に何の関係が…」
「見てみろ」

 そう言って焔真先輩は彩兎先輩を親指でビッと指す。その方向には、火燐先輩の後ろから乗っかかって、火燐先輩の頭の上に腕を置いて、二人の話を聞いていた。火燐先輩は全然動じていない。凄い。いや、あっちゃんもだけどさ。

「そういうことですか…」
「そういうことだ」

 でも、火燐先輩は全然嫌そうな表情はしていないし、慣れてるのかな。

「そう言えば、前から気になってたんですけど…」
「何だ?」
「火燐先輩と輝先輩って、先輩方に敬語使ってませんよね…」

 どういう関係なんですか?
 そう問えば、先輩は小さく声を漏らしてから、先輩達が楽しそうにしている姿を見ながら呟いた。

「簡単に言えば、家族みたいなもんか…」
「え?」

 どういう事だろう。
 そう思っていれば、そう考えているのを分かっていたようだけど、あたしから目をそらした。

「詳しくはまた、教えてやる」

 そう言って焔真先輩は彩兎先輩を、火燐先輩から引き剥がした。そして彩兎先輩がブーたれて、輝先輩が彩兎先輩に怒鳴って、火燐先輩が呆れていて。本当に家族みたいに仲が良かった。
 見ていてほのぼのする。

「よ、よし! 兎に角今日も頑張るわよ!」
「お、おー!」

 火燐先輩が何とか仕切り直し、皆で言葉を詰まらせながら答えた。



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