手段は言葉だけじゃない

 先日、俺はSBにて悔しい敗北をしたわけである。
 まぁ水憐先輩の指示通りに行動しなかった俺が悪いことは、百も承知ですよ。だけどさ、やっぱりどうしても目の前に敵が現れたからには、戦わなきゃって思うよね?



 放課後になり、SBが始まったことを告げるチャイムが鳴る。
 一気に学校の雰囲気が変わったような、不思議な感覚になる。先輩たちは、少し目つきが怖くなっていて、水憐先輩は俺を鋭い目つきで見てきている。思わず冷や汗が流れそうだ。いや、流れた。それを気付かないふりをして、目線をそらす。
 今度はいうことを聞けとか、そういう事なんだろうけど、申し訳ない。また無茶するかもしれません。

 取り敢えず、水憐先輩の指示に従い、教室を出て、俺はげんげんと一緒に校舎の中を走り回る。

「げんげん、今日も会っちゃうのかな」
「そうかもな」

 なんて、会話をしていれば。

――ドンッ!

 大きな音がしたかと思うと、地面がいきなり盛り上がり、俺の足元が周りに比べると高くなっていた。思わずバランスを崩して尻餅をつく。

「いっ――」
「優羽! 大丈夫か!」

 下の方から聞こえるげんげんの言葉に、俺は大丈夫と返す。それに、これの原因は分かっている。前回、自分自身が負けた理由でもある。前の方から足音がして、軽く覗き込むようにしたを見れば、彼と目があった。

「よぉ、久しぶりだな」
「白夜さん…」

 本当は会いたくないですけどね。
 先輩はニッと笑って、パチンと指を鳴らす。すると、俺の足元にあった盛り上がっていた地面が、一瞬にして消えた。
 高く盛り上がっていたため、かなりの高さで地面が消えたわけで…。

「うわああぁ!」

 落ちる!
 そう思っていれば、誰かに空中で抱えられる感覚。顔を上げれば、げんげんが俺を空中で抱えていた。

「大丈夫か」
「た、助かった…」

 空間移動の出来るげんげんが居て、本当に助かった…。
 そして下ろされて、俺は白夜さんを見据える。

「前回の屈辱、晴らせてくださいよ」
「無理言うなよなー。負けたらこえーんだよ」
「こっちだって、先輩が怖いんスわ」

 俺が手に電気を集めれば、俺の真後ろに突風が吹き荒れた。とっさのことに、驚きで目を開きつつ、後ろを振り向く。その場には、げんげんが、誰かと向き合っていた。そのげんげんも、目を丸くしていた。
 こっちからだと後ろ向きで分かんないけど、よく見れば見覚えがあるような気がする。そんな彼が、俺の方に振り向いた。

「また、お前らか」
「あ、アンタ…!」

 俺が口を開くと、足元がまた盛り上がり、不安定になり転びそうになるのを何とか堪える。原因であろう、彼の方に顔を向ければ、彼はニッと笑みを見せる。

「俺と戦うのに、余裕なもんだな」
「余裕じゃねぇっスよ。驚いただけですよ」

 こんな、二人を相手に、余裕なんて出来るわけないじゃないか。

「改めて自己紹介する。竜峰青也。一応四天王と呼ばれているが…」
「んなの皆知ってるだろ。俺は虎臣白夜。生徒会、四天王だ」

 四天王を相手に、頑張るしかないか。

「げんげんは青也君をお願いね!」

 俺は、この間の雪辱を晴らすんだ。
 そう生き込んで、軽く笑みを浮かべながら、白夜さんを見る。彼は面白そうに口端を上げていた。

「優羽!」

 後ろから、げんげんの声が聞こえる。振り向かずに居ると、彼は続けて叫んだ。

「負けたらぶっ倒す!」

 思わず口端が上がった。

「分かってるよ!」



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