いまのってセーフ?

 朝食をとって、歯磨きして、洗顔して、髪を整える。髪を濡らして、ドライヤーで整えようとするが、やっぱりサラサラにはならない。あのCM嘘じゃないの? なんて思いつつ、軽く髪をひとつまみ掴んで、指で少し転がすように触る。髪は痛んでないから、やっぱり髪質だろう。ストレートになってみたいが、ストパーをかける勇気はない。

 小さく息を吐いてから、ドライヤーを元の場所に戻し、制服のチェックをする。うん、大丈夫そう。

 降りてくるときに、一緒に持ってきたバックを持ち、玄関に向かう。あっちゃんは、どうやらもう外に出ているらしい。少し慌てながら、スニーカーを履く。ローファーも良いな、と思ったんだけど、少し靴擦れが嫌だから、止めておいた。お気に入りの靴を履いて、行ってきます、と少し大きく声を上げてから家を出る。

「ごめんね、待たせて…」
「いえ、大丈夫ですよ。むしろ私が勝手に家に上がってしまい、本当にすみません」
「いや、それは大丈夫! 寧ろあたし迎えに来て貰ったことがないからさ、嬉しかったりするんだ」

 笑いながらそう言えば、あっちゃんも笑顔になるので、良かったと一安心。
 ここ最近、二日間は本当に一日が濃すぎて、一気に一週間経った気分だ。それに、あまりにも信じられないようなことばかりで、今だに夢ではないかと思ってしまう。

「でも、夢じゃ、ない…」
「どうかしましたか?」
「あ、いや、何でもないよっ?」

 思考の読めるあっちゃんだから、もう分かってるかもしれないけど。慌てて両手を左右に振った。彼女は気にしないように前を見て、あたしは少しホッと息を吐く。
 夢ではないと、分かっているから、だからこそ鮮明によみがえってしまった。あの時の衝撃。確かにあれば“異能”だった。だけどあたしの意識も感覚もここにあって、それはとても不思議な感覚だ。
 何か、眠れば今までのような、普通な感じに戻れるかもしれない。そう淡い期待をしていたのに、やはりというかなんとうか、それは眠る前に見ていた風景が変わることはなかった。
 けっして、嫌という訳ではない。あっちゃんと出会えたことはとても嬉しいことだし、喜ばしいことだと思う。けれど、今までの平凡な生活も、羨ましくは感じてしまうのかも。



「おっはよー! 二人共ー!」
「あ、西野君とげん君」
「おはようございます」

 少し遠くから、大きくてを振りながら駆け足で走ってきた西野君。その後ろではまだ眠そうな表情をしている、げん君が居た。相変わらず眉間のシワがとれてない。

「うあーっ! 久しぶりあっちゃん! 会いたかったよー!」
「まだ一日しか経ってないから! てか、あっちゃんの顔! 顔が!」

 西野君があっちゃんに抱きつきながらそう言えば、今度はあっちゃんの眉間に皺が寄ってきている。そんな二人の後ろで、げん君が今だに眠そうに、眉間にシワが寄っている。誰か止めて!

「止めてください」
「ぐふっ!」

 抱きついている西野君の腹に、あっちゃんがグーで殴った。ナイスボディーブロー。綺麗に決まっていた。そんな彼らを少し遠目で見ていれば、あっちゃんがあたしの方を見て、行きましょう、と口を開く。
 あたしはそれに頷いて、一緒にクラスに向かった。暫くしてから、二人も追いついて一緒に向かったんだけどね。



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