鍵を握っていくもの

 三人で、今日最初に行った教室に向かえば、あっちゃん達が居た。草眞先生は、どうやら教務室に行ったらしい。仕事でもあるのかな?
 それを確認した火燐先輩は、振り返って、笑みを浮かべた。

「じゃあ、今日はこれで解散ね」

 先輩がそう言えば、他の先輩達がそれぞれ鞄を持ち、教室から去っていく。先輩たちが手を振ってくれたので、手を振り返す。鍵って、あたし達が返すべきなのかな、後輩だし…。あたしが鍵を返しましょうか、と言えば大丈夫だと言ってくれたので、お言葉に甘える。
 すると、先輩があたしとあっちゃんを見て、笑みを浮かべた。

「そうだ、二人とも一緒に帰らない?」
「あ、はい! もちろんです!」

 あたしが少し大きな声で答えれば、あっちゃんも笑顔で首を縦に振った。それに先輩も笑みを浮かべ、三人で並んで歩いていく。
 先輩は結構楽しい人で、いろいろな話題を出してくれた。

「そう言えば、今日は体育委員が負けたみたいだね。」
「そうみたいですね…」

 名前からして強そうだったんだけどなぁ…。そうでもなかったのかな…?

「強いですよ。体育委員は」
「え? 戦ったの?」

 あっちゃんの言葉に、あたしは疑問を浮かべる。けれど彼女は首を横に振った。戦ってはいないらしい。けれど、彼女が言うには、過去には負け無しな委員会だそうだ。何故? そう問えば、どうやらかなりのかなりの腕の司令塔(委員長)が居たから、とのこと。

「因みに、今年二年生です」
「え!?」

 てことは、去年一年で委員長になったってこと!? なにそれ凄い…。
 すると、火燐先輩が小さく息を吐いた。とうしたのかな、そう思って声をかけようとしつつ、曲がり角を曲がった瞬間…。


「うわあぁぁぁ!」
「何やってんだお前ぇぇぇ!」

 曲がり角のすぐそばに、人の山となったその上に、一人の男子が立っていた。思わずあたしと火燐先輩が叫んだ。
 こう、人間ピラミッドとかじゃなくて、本当に死体のように、人が積み上げられている。怖い、なにが起きてるのか分からないから、滅茶苦茶怖い。
 そして、そんな山の頂上に立っていた男子が此方に振り向いた。
 ……ん? 何か誰かに似てる…。

 チラリと隣にいた火燐先輩を、見る。そして再び目の前の男性を見る。それを交互に高速で行う。

「に、似てる…!」

 すんごい似てる! 瓜二つって、こういうことなのか、と言うくらいだ。同じ髪型にしたら、間違わない自信がない。恥ずかしながら。
 あたしと同じ事を思ったのか、あっちゃんもポカンとしていれば、目の前の男性は小さく息を吐いてから、その場で自己紹介を始めた。

「どうも。二年一組、体育委員長の飛騨水憐です」

 飛騨…? もう一度火燐先輩を見る。先輩も飛騨という苗字だった…よね?
 ちらっとあっチャンを見れば、首を縦に振ってくれたので、少し安心して先輩見れば、大きなため息を一つ。

「双子」
「え?」
「アイツと私は双子の姉弟。因みに私が姉」

 どうりで、そっくりだと…。何か血のつながりをよく見るな…。そう思っていると、水憐先輩の足下から、呻き声が聞こえた。

「水憐さん…! そろそろ許してくださいよ…!」
「あぁ? アンタが僕の指示を聞かなかったのが原因でしょう?」
「じゃあ、俺達は…」
「ここに山になってるアンタ等全員ですよ!」

 そう言って彼は、足をグリグリとし始めた。うわぁ、怖い…。彼等の足元から痛い痛い! と悲痛の叫び声が聞こえる。
 ん? よく見れば、見覚えのある顔がある…。そしてその目と、あたしの目があった。

「ゆ、ゆゆゆゆっきー! ヘルプヘルプ! 助けて!」
「西野君…」

 軽く口端が引きつった。そして彼はあたしの横の、彼女に視線が移る。そして、目が輝いた。

「アリスちゃーん! 偶然だ、ね!?」

 最後まで言わせず、西野君が腕を振ると同時に、水憐先輩がもう一度力強く足を踏み下ろした。容赦がない。怖い、ドSだ。

「随分余裕そうですね? 原因の一つが馬鹿が」
「いたたたっ!」

 西野君もやばそうだけど、その下敷きになってる、他の三人も死にそうだ…。あれ、よく見ればげん君も居る。
 そう言えば、さっきの話に、体育委員の委員長は去年一年で、今年二年生だって、あっちゃんが言っていた。さっき、目の前の水憐先輩は、体育委員長だって言っていた。しかも二年生とも。
 もしかして…。

「はい、彼がさっき話していた人です」

 彼の指示に従えば、ほとんど負け無し、上級生にも負けない実力を持つ。と言われているそうだ。よく考えれば、火燐先輩も、二年生での委員長だ。この双子、どんだけ強いんだよ…。

「これに懲りたら、無闇に突っ込んで行かないように。特に優羽、源輝。お前ら、四天王のこと甘く見過ぎなんだ馬鹿野郎」

 敬語無くなったとか、口悪とか思うのと同時に、またもや気になる、そして今日かなり耳にした単語があった。

“四天王”

 だから、四天王って、どんだけ強いのよ!



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