答えはひとつですか

「ところで、さっき由希ちゃんに攻撃してきたのは、彼じゃない?」

 そう言って彩兎先輩は遠くを指差す。その先には、確かに人がいる。目を凝らして見てみると、今日何回か見た彼がいた。

「武関玄眞くんだ」
「ん? あぁ、生徒会の」
「げっ、早速会っちゃったか。よりによって四天王の一人だなんて、運悪ー」

 火燐先輩の言葉に首を傾げる。四天王って何だろう。
 疑問に思っていれば、彼がこっちに歩いてくる。先輩も頑張っていたんだし、あたしも頑張らなきゃ!
 あたしが気合を込めて彼を見れば、彼はクスッと笑みを見せた。

「どうも、武関玄眞。生徒会、四天王の一人です」

 だから四天王って何だ。
 あたしの疑問が顔に出ていたのか、火凜先輩が答える。

「四天王っていうのは、中等部でとある四人が同じ委員会に入っていた人達。その委員会がいつも圧勝していて、そしてその四人が中心となっていたことから、呼ばれているんだよ」

 という事は、彼がその四天王というやつで…それはつまり…。

「すごい、強いってことですよね…?」
「すごいじゃあ言い表せられないかなぁ」

 彩兎先輩が笑いながら言うけど、だから笑い事じゃないって!

「まぁ今回は様子見だったんですけど…」

 彼がそう言うと、両腕それぞれに水の渦が巻き、手にそれぞれの形が出来た。そしてそれは氷へと変わっていく。
 右手には矢、左手には弓。そしてそれを構え、矢はあたしの方へ向いていた。


 …………。


「……へ?」
「面白そうなので、参加するね」

 そう言って、矢を持っている右手をパッと開いた。

「わ、うわわわっ!」

 思わず両手を前に出す。この際体が串刺しになるんだったら、せめてこれだけで済みますように!
 ギュッと目をつぶって、痛みを待っていても痛みは来ない。ソっと目を開けば、光のベールがあたしを守っていた。

「…え?」

 あたしが間抜け面していれば、正面にいた武関君も驚いたような表情をしていた。
 えっと、これは能力が使えたってことで良いんだよね…?

「へぇ…」

 武関くんはニッと笑って、今度は左腕に氷が覆って、まるで剣の様になっていた。

 ああ、彼って左利きなんだ。
 ってそんなのどうでもいい!
 ぎゃあぁぁ! 危ない! 怖い!


「由希ちゃん!」

 グイっと腕を引っ張られ、彩兎先輩があたしを抱える。
 うわっ! あたし抱えられた事がないから変な感じ!
 そして直ぐに火燐先輩があたしを彩兎先輩ごと、抱えた。……え? どう考えても体重とかおかしくない?

 そう思ったら、先輩が少し屈んで、思いっきり体を伸ばす。すると一気に地面が遠くなった。


「ひゃああぁぁ!」
「黙ってたほうがいいよ。舌噛むよ」

 同じく抱えられている彩兎先輩に、口を押さえられる。火燐先輩力強すぎ! 脚力強すぎ! なにこれ!
 軽い涙目で下を見れば、武関君は薄い笑みを見せていた。


 
 入学してたった一日。もうこの学校が怖くなりました。



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