答えはひとつですか
先輩に腕を引かれ、たどり着いたところは校庭。周りには誰もいないようだけど…。
キョロキョロと見渡していれば、彩兎先輩に肩に手を置かれ、見上げれば彩兎先輩がとある方向を指差す。
「ほら、あそこ。人が隠れてるのが分かる?」
「あっ本当だ…」
気づかなかった。やっぱり先輩ってことで慣れているんだろうか。火燐先輩を見れば、腕を組んで笑みを浮かべている。
どうしたんだろうと思っていると、隠れていた生徒が飛び出してきた。
わ、うわあぁぁ!
あたしがビックリして慌てて居ると、彩兎先輩がピンクのメガネをかけた。
「せ、先輩それは?」
「これ? 僕が能力使うのに必要なものだよ」
笑みを浮かべて答えるが、あたしにはよく分からない。ハテナを頭にたくさん浮かべていると、先輩の両手にパリッと電気が走りだした。
あれ、これさっき見たような…。
そうだ、輝先輩が使っていた能力だ。
そして生徒の一人が飛び掛ったところで、彩兎先輩は相手の腹に拳を叩き込む。うわ、痛そう…。
すると、相手は急に動かなくなって、その場に倒れた。よく見ると相手は痺れているようだ。さっき輝先輩は相手を完全に倒していたのに対し、彼の場合は痺らせる程度。似ている能力なのかな…。
そう思っていれば、火燐先輩は鈴を取り出す。
「彩兎、補助頼むわ」
「ん、りょーかい」
彩兎先輩が了承すれば、火燐先輩は鈴を鳴らす。
すると、物凄い強い勢いの炎が、火燐先輩を包む。その炎の渦の中で不敵に笑う先輩に、不覚にもときめきました。
そして、その炎を両手にそれぞれ集めて、相手の方に腕を伸ばした。
その炎は勢い良く相手に向かって、炎の渦となって相手を包む。相手が苦しそうな顔をして暫くしてから炎が消えた。
「炎消えちゃいましたけど…」
「あぁ、炎で囲って相手の動きを封じたりしたから私に得点が入ったんだ。だからもう必要ないから」
「成程…」
そうなんだ…。あたしが納得していれば、火燐先輩が目を開いた。
「由希ちゃん! 後ろ!」
「へっ? えっ!?」
バッと振り向けば、あたしの方に氷柱が勢い良く向かってきていた。
何でこの時期に氷柱!? てかそんなのどうでもよくて! 刺さる! 死ぬ!
急のことと恐怖で動けず、思わず両腕で顔を守るように覆えば、ジュッという音と共に、氷柱が溶けて、ただの水となって地面に落ちた。
「え、あれ…」
「由希ちゃん大丈夫?」
「え、あぁはい…」
彩兎先輩に声をかけてもらいそちらを向けば、彼の右腕の周りには炎を渦巻いている。あれ、さっきまで電気だったのに…。
あたしが混乱していれば、先輩はにこりと笑みを浮かべた。
「僕の能力は模倣。コピーと言ったほうがわかるかな? 一度見たものなら、使うことができる能力だよ」
ただし、威力は半減するけどね。
先輩が説明し、納得した。そっか、だから色々な能力が使えてたんだ。
「ありがとうございました」
「いいよ。今日は初めてだからね。次はないと思ってよ?」
「は、はい…ガンバリマス」
ブラックスマイルで言われたら、頷くしかないだろう。彼は普段は物腰穏やかなのに、何気一番容赦ない人だと思う…。
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