分からないことだらけ
その後新入生代表の挨拶も終わり、始業式も終わり、皆で教室に帰っていく。
「あっちゃん!」
「由希さん」
待ってくれた彼女に、慌てて駆け寄る。
「はぁ、緊張した…」
「名前を呼ばれて返事をするのは、やはり緊張しますよね」
あたしが胸に手を当てながら言えば、彼女も同意してくれる。あー、良かった。仲間がいてくれて…。
あたしがそう思っていれば、隣にいたあっちゃんに誰かがのしっとのし掛かった。
「アリスちゃーん、お疲れ様!」
西野君だった。急の出来事に呆然としていたが、直ぐにハッとしてベリっと剥ぐように、あっちゃんと西野君を離す。
「き、急に何してるの!」
「アリスちゃんがいるから、つい?」
んー? とか言いながら首を傾げる彼。その動作が似合ってんだから、余計に腹が立つ。あたしが軽く睨んでいれば、彼はあはっと笑う。
「まぁまぁ、そう睨まないでよ、ゆっきー」
「ゆっきー!?」
「嫌?」
何行き成り!? そう言われたの初めてだよあたし! 嫌って聞かれてもさ…! てかあたしもあまり人のこと言えないのだろうけれども!
あたしが呆然としていれば、後ろから西野君にげんげんと呼ばれてた彼がいた。さっきので名前呼ばれてたので覚えてはいる。確か東堂源輝君。あぁ、だからげんげん。と納得していた。
「優羽、いいかげん南を離してやれ。眉間にしわが寄ってきている」
「えっ!? わあぁぁ! アリスちゃんゴメンね!」
慌てて彼が離れるが、あっちゃんの顔は今だに険しかった。あぁ、あっちゃん…。軽く同情します…。
あっちゃんに同情していれば、東堂君に挨拶をされた。
「お前は北村由希だろ。宜しく北村」
「あ、あぁ…こちらこそ。えっと、なんて呼べばいいかな…」
「好きに呼べ」
「じゃあげん君?」
これでも大丈夫かな? そう思っていたが、どうやら大丈夫だった様子。
「俺には苗字なのに、げんげんにはそう呼ぶんだ」
「あたしは認めた相手にしか呼ばない」
「ひっど」
そう言いながらも笑うのだから、この人は読めない。
取り敢えず、あっちゃんの手を引いて、一緒にクラスに向かった。
← /
→