やわらかなつぼみ

 名字的にまぁ、当たり前かなと思ったけど、席は離れてしまった。まぁ、カ行とマ行だもんね。
 始業式までにも時間あるし、あっちゃんの隣でお話をする。あたしが立ったままでいたら、あっちゃんの左隣の子が椅子を貸してくれた。
 わぁぁ、ありがとうございます! この学校の人は、皆優しいのかな。
 お礼を言って、お言葉に甘えて椅子を借りてあっちゃんとお話をする。

「あっちゃんは何か部活に入ったりするの?」
「私は部活はやらない予定です」
「そうなんだ! あたしも家の事情とかで部活は入れないんだー」

 家がお店、こっちにお母さんの実家があったので、そこに引っ越したのだが、その実家がお店をやっているので、そちらのお手伝いとかもしないといけないんだ。
 だから、部活出れないなーとか思ってたんだけど、よかった一緒にも帰れるフラグ?

 あたしがそう思っていたら、あっちゃんが一緒に帰りませんか? と言ってくれたのであたしは勢い良く首を縦に振った。

 転校で不安ばっかりだったけれど、あっちゃんと一緒に居られて、穏やかに過ごせそう。


 この時まではそう思っていた。



 再び話をしようとあっちゃんに声をかけようとした瞬間、「あー!」という大きな声がし、暫くしてから、フッとあっちゃんが視界から消えた。

「……え?」

 どうしていなくなった?

「やっと見つけた! 探したんだよアリスちゃん!」

 声のした方に顔を向ければ、身体を抱えられて、ぷらーんと足をぶら下げているあっちゃんが、視界の上に映る。
 な、な…! 急に何してるのこの男!

「あー、やっと会えた。可愛いー、小さーい、軽ーい」

 軽く頬擦りをする彼。クラスの皆もざわざわとざわついてくる。
 彼はヒョイっとあっちゃんを抱え直して、向き合うようにした。

「あのね、俺アリスちゃんの事が好きなんだ。だから俺のものになって欲しいんだけど。良いかな」

 クエッションが無い!
 まずいよこの状況。あっちゃんを助けなきゃ。あぁでもあっちゃんがもし了承したら、あっちゃんも彼のことが好きだったら。あたしはとやかく言える立場じゃないじゃない。
 あっちゃん…!


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