愛してほしかったの

「最近ゆっきーせわしないよね…」

 もう少しで期末テスト、ということで部活はすっかり休み期間になった。
 周りの皆も家に帰って勉強したり、少しバタバタしている。まあこのテストが終われば、あとは待ちに待った夏休みだしね。
 けれど、最近のゆっきーは家に帰って勉強するわけでもなく、どこかに向かっていくことが多くなった。

 図書館で勉強してるのかなーって、げんげんとアリスちゃんと一緒に行ってみた時も、図書室にゆっきーは居なかった。
 実際に今日もチャイムがなると同時に教室を飛び出していた。


「何か用事でもあるんじゃないか?」

 教室が勉強モードに入って、皆がそれぞれ机に座って友達と勉強していたりしはじめる。俺たちはそろそろ邪魔になるんじゃないかなと、少し駄弁ってからどこかに移動しようかと話す。

 最初の俺の呟きにげんげんが軽く答えながら、図書室に向かおうとする。

「……」
「アリスちゃん?」
「あ、すみません…。ぼうっとしてて…」

 アリスちゃんは、机の上に置いておいたカバンに手を置いてぼうっとしていた。アリスちゃんは声をかければ、少し苦笑いしながら笑みを浮かべる。
 別に謝らないでいいのに、と答えればアリスちゃんは少し目線をそらした。

「……あのさ、一緒に図書室で勉強しない?」
「あ、はい…。私もそうしようと思ってたんです」
「ん、良かった」

 ドアのところで待っててくれたげんげんのところに二人で向かい、一緒に図書室に向かう。
 この期末で赤点を取らなければ、俺は夏休みに部活に専念できるぞ…! 頑張ろう…!
 少し意気込みながら歩く。図書室は1年の教室からは少しだけ遠い。ゆっくりとアリスちゃんの歩幅に合わせて、話をしながら歩けば図書室につく。

 時羽の図書室はとても大きい。流石と言うべきなのかもしれないけれど。

 図書室にある本の数は計り知れない。ジャンルごとに分かれてるっちゃあ分かれてるけれど、どの本がどこにあるのかすら分からない。
 けれど、図書委員の人は全員どこに何があるのか分かるんだって。図書委員強い…。SBでは結構負けが多いけれど、こういうのは本当にスゴイ…。それぞれの委員会ごと、ちゃんと活かせるように分けられてるのかなあと、今更ながら会長がすごいと感じてしまった。

 それはさて置き、どこか空いてる席でもないかな…。と周りを見渡せば、アリスちゃんがとある方向を目で見ていた。
 その方を見てみると、そこに居たのは十知君と、あと…誰だっけ、あの、4組の級長だったかの…。

「酉海さんと高忤さん…」

 アリスちゃんがボソッと呟けば、二人はこっちを向いた。
 高忤と呼ばれた彼は、にこっと笑みを浮かべて手を振る。その様子に思わずムッとなるけれど、彼らの手に持っている本に思わず目が行く。

「あ、愛の断罪所だ」
「おや、西野さんご存知ですか?」
「知ってるよー! 俺でも読んでみようって思った本だもん!」

 俺が彼から受け取った本を見て思わず興奮する。
 隣のアリスちゃんは頭の上にハテナをたくさん浮かべていた。

「愛の断罪所?」
「あれ、アリスちゃん知らなかった…? 読書好きだって言ってたから、てっきり知ってると思ってた…」
「流行ものには疎くて…」

 少し苦笑い気味に答えるアリスちゃん。高忤っていう彼が、確かにそれっぽいと呟く。この野郎、アリスちゃんを貶すんじゃない。

 俺が改めて本をまじまじと見つめる。
 それを見て、十知君は笑みを浮かべながら、お譲りしましょうか? と言ってきた。

「え? でも、これは十知君達が先に借りる予定だったんじゃ?」
「いえ、少し手に取ってみただけですので。ラスト一冊みたいなので、今取らないと次いつ借りれるか分かりませんよ?」
「んーあー…じゃあお言葉に甘えて、借りようかな」

 十知君にお礼を述べると、彼らは一緒に図書室の外に出てった。
 それを見送っていると、アリスちゃんがこちらを見ているのがわかる。

「どうしたの?」
「いえ、そんなに人気な本なのかと…」
「まあ、結構面白いんだよ」

 パラパラと本をめくる。


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