何も知らないパウダーブルー

「それよりどうしたんだい? 君はなにか探し物?」
「あー、まあ会長を探してて…」
「へー…じゃあ一緒に生徒会室までついてってあげる!」

 彼女はあたしの手首を掴んで、そのまま引っ張るように歩き出す。歩き出しに少しつまずいたけれど、すぐに彼女の歩くペースに合わせた。
 そういえば、彼女はどうして学校に残っていたんだろう。参加しないんだったら、普通はもう帰ってるはずだ。参加しない人は帰るように言われてる。それは関係ない人が怪我をしないために。もし残ってて怪我をしても、それは自己責任だ。帰るように言われてるんだから。
 だから、残ってるってことはなにか理由あるんだよね。きっと。

 このまま他の委員会に見つからないといいんだけど…。

 そう願いながら歩いてるけど、そうもいかないみたいだ。

「お前は生活委員だな! くらえ!」
「わっ、このやろっ…!」

 いきなり向こうから攻撃を仕掛けられて、あたしは繋がれていた手を解き、そのまま自分の能力で相殺した。
 相手が軽く舌打ちしたけど、もう学んだことだ。殺られる前に殺る。言い方恐ろしいけれどね! でもさっきも言ったけど、武関君以外の人にポイント削られたら、あたしが先輩に殺される…!

 手のひらに小さい光の塊を作って、それを相手に向かって投げつければ、光は高速で相手に命中する。相手が軽く吹き飛んだのを見て、半歩後ろに下がってから、そのまま踵を返して走り去る。

 あー怖い…! いや、でもだんだんと躊躇いも持たなくなってきた、自分が一番怖いのかも…! なんてね!
 少し走ってから、あたしはハッとして足を止める。

「あ、そういえばあの子は…」

 周りを見渡してみても誰もいない。
 すっかり忘れてた…。
 思わず顔が青ざめる。さっき手を離してからどうなったのか分からない…! あぁ、でも彼女のいた方に走ってきてもいなかったから、もう先に逃げたのかもしれない。そうであってほしい。
 
 小さく息を吐いてから、引き続いて生徒会室を目指す。

 生徒会室は少し離れたところにある。そろそろ会長と話をしたいんだけどなあ…。今日こそ会えるといいな…。
 角を曲がるときはこそこそと、敵と鉢合わせないように気をつけながら…。
 こそこそとしながら、ゆっくりと生徒会室に近づく。

「よかった、鉢合わせしなかった…」

 安堵の息が出てから、生徒会室の扉をノックする。
 トントンと叩けば、誰かが反応するかと思ったけど、誰もいない。

「……すいません誰かいますか?」

 再度叩いて声をかけてみても、何も返事も音も返ってこない。
 んー…やっぱりだめか…。

 鍵かかってるだろうけど開けてみるか。そう思って手を伸ばす。



「ちょっと。SB中は生徒会室は使えないはずだけど?」

 右の方から声が聞こえてそちらを向けば、そこに居たのは探し求めていた会長だ。
 会長はあたしの顔を見て、疑問気に首をかしげた。

「北村ちゃん? どうしたの?」
「えっと、ちょっと会長を探してて…」
「ボクを?」

 なんでまた。と笑いながら言うので、あたしも思わずつられて笑った。
 
「あの、色々知りたいことがあって…。会長に聞きたいなって思ったんです」

 会長は成程、と頷いてから笑顔になる。

「じゃあ、今日はSBだから無理だけど…。明日でもいいかな。絶対に予定空けるから! 放課後ね!」
「わ、分かりました!」

 彼はポケットから手帳らしきものを取り出して、そこに予定を書き込んでいた。

「明日はちょうど何も予定はないし。うん、じゃあ明日授業が終わったら来てもらえるかな?」
「はい」

 じゃあ、今日はもう少し頑張ってね。
 会長に小さく手を振られて、あたしは軽く頭を下げて、慌てて先輩たちのいる方へ走る。

 よし!! やっと!! 明日、色々聞ける、知りたかったことが分かるかもしれない…! 今日は帰ったら聞きたいことをまとめておこう。

 とにかく、今は先輩と合流しなきゃ。
 そう意気込んで、まだ安心できる、誰もいない廊下を走った。


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