何も知らないパウダーブルー

「はああ…最悪……」

 カーディガンを絞って、水を雑巾のように絞る。縮まないといいんだけれど…。
 バサバサと広げてから、腰に巻く。Yシャツも絞ってみる。
 あーあ、スカートもびしょびしょだ…。まぁ、今更じゃないんだけれども…。

 兎に角、生徒会室の方に行かないと…。

 足を進めていると、遠くから声が聞こえる。
 聞くと先輩達じゃないし…。ってことは、敵の委員会!

 慌てて影に隠れる。しゃがみこんで、できるだけ息をしないように…ていうか小さく呼吸をしてみる。これでごまかせるかな! ど、どうか見つかりませんように…!!

 あたしは壁だ、壁だ…と念じながら息を潜んでいれば、ぐいっと後ろから腕を引っ張られる。

「ひっぎゃっ…」

 悲鳴を上げそうになった時に、口に手を覆われた。
 え、えええ誰!? 委員会!? うわあああまずい、攻撃されたらポイント減る…! 武関君以外の攻撃で減らされたら、彩兎先輩に殺られる…!

 能力を使って逃げようとした瞬間、耳元に聞こえる声。

「待って待って! ボクは敵じゃない…!」

 一人称がボクだけれど、声の高さ的には女子…。
 だ、だれ…?

 あたしが声を出さないでいると、そのまま腕を引っ張られて、死角となる所に連れて行かれる。 さっきのところから死角になるところまで引っ張られ、そこに腰掛けるように言う。

「ボクは1年3組の級長の子北 一琶(ねきた かずは)」
「はあ、どうも…」
「学級委員は、SBにはたまにしか参加してなくてね…。今回は参加してないんだ」

 彼女はあたしに近づいて笑みを浮かべる。
 本当だろうかと疑問に思ったけど、センサーが見当たらない。ということは、参加していない人となる。

「あ、さっきは助けてくれてありがとうございます…」
「気にしなくていいんだぞ!」

 それにしても、この人どっかで見たこと…。
 じーっと彼女を見ていれば、彼女もじっと見てきて「あっ!」と声をこぼした。

 ど、どうした…!

 あたしも慌てると、彼女はベシンッとあたしの額を叩く。
 い、痛い…! めっちゃいい音がした…!
 シュウウウと音が鳴ってそうな額を、両手で抑える。急に何をするんだこの人は…。

 あたしがちらりと彼女を見れば、彼女は自分の手のひらを見て、あたしの視線に気がついた。

「あっごめんね! 急に叩いたりして! 許してくれよっ!」
「え、あぁいいんですけど…なんで急に?」

 あたしが疑問でいれば、彼女は、えーっと、とか。うんうんと悩み始める。

「なんとなく…?」
「許さん」
「うわああ! ゴメンよー! 悪気はなかったんだ〜!」

 必死に謝る彼女を見て、一気に怒る気が失せた。
 琥珀色のカールされた、ふわふわな髪の毛。緑色の瞳がとてもきれいだ。まぁ簡単に言えば、可愛い女の子なんだけど…。それで、髪の毛にお花をつけてる。
 うーん、どっか見たことあると思うんだよね。
 でも思い出せない。

 じっと彼女を見れば、彼女は首をかしげる。

「あたし達会ったことない?」
「……やっぱり」
「え?」
「あ、いや。ボクもそんな気がしてたんだ! やっぱり同じ1年だし、どっかで会ってたのかもね!」

 あー成程ね。そういうことか。


「そういえば、前から疑問だったんだけど…」
「なあに? なんでも聞いておくれよ」

 ふへっ、と笑みを浮かべて言う。
 幼いような、どこか無邪気な雰囲気に思わずあたしも笑みがこぼれてしまう。

「学級委員の人って、全員異能者なの?」
「うん、そうなんだぞ。全員異能者!」

 じゃあ、各学年4クラスだから…。4×3=12…。12人か…。
 あーだから、たまにしか参加しないんだ。SBは6人までだからね。

「因みにボクは壊すって能力だよ」
「壊す…?」
「うん。あ、木っ端微塵にして消す…という感じでも言えるかな?」

 見た目可愛いのにかなり物騒だった。


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