この手を取って

 ずっと笑顔を浮かべながら言えば、彼女は顔を少し赤くしながら、あたしに礼を述べた。
 やだなぁ、そんな礼を言われるような奴じゃないのに。でも言われて嬉しいなぁてへっ。

 一人でデレデレしていれば、あっちゃんは思い出したかのように口を開く。

「由希さんは、どうして時羽に?」
「え、あぁ母親が勝手に…」

 書類のみで通った、と言えば彼女は考え込んでから、何か納得したような素振りを見せる。

「由希さんは、過去に今日みたいな事はありましたか?」

 え、どうだったかな…。あたしは、あまり記憶は無いんだけれど…。今日は少年を助けたが、過去に何か不思議な感じがしただろうか…。
 記憶を遡る。うーん…。

「あ、そう言えば過去に高いところから落ちたとき、不思議な感覚がして、怪我をしなかったことがあった。」

 ピーンと効果音がつく感じで思い出した。例えれば豆電球と言ったところだろうか。
 よく考えれば、あの時お母さんも見ていたんだ。

「小さいときから使えてたのかな…。記憶には無いんだけれど…」
「何かきっかけが有ったのかもしれませんね」

 うん、そうなんだろうね。そう言うことにしておくよ。でも母親よ、少しは教えてくれても良いのではないのだろうか。畜生。

 あ、そうだ。

「あの、あっちゃん…お願いがあるんだけど…」
「はい、何でしょう。何でも言って下さい」

 呆れるかもしれない。いや、でも頼れるのは彼女だけ、あっちゃんだけ!あっちゃんなら、許してくれる…!

「あ、明日!」

 ひぃ! 声裏返ったあぁぁぁ!
 顔を真っ赤にしながら、言葉を続ける。

「明日、一緒に学校に行きたいです!」

 また裏返ったあぁぁぁ!!
 もう埋まりたい! 泣きたい!
 あたしが泣きそうになっていれば、あっちゃんは一瞬呆気にとられてから、ふわりと笑みを見せた。

「大丈夫ですよ。一緒に行きましょう」

 あたしの周りにパアッと花が咲いたのがわかった。

「ありがとう!」




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