体育祭 後

 騎馬戦の後に3年の学年種目が終わってから、クラス対抗リレーが終わり、続いての競技が…。

《さぁ、そろそろ終盤になりました。委員会対抗リレーです!》

 き、来た――っ! 遂にきちゃった。名物であり、あたしが出る種目!
 思わず心臓がバックンバックン言っている。緊張感が半端ない…。小さく深呼吸を繰り返す。
 スーハースーハー。

 やばい、全然緊張解けない。

「北村、顔面蒼白」
「げん君ー! やばいよ、どうしよう!」

 あたしが軽く半べそになりながらげん君に縋れば、げん君は小さくため息を吐いてから、オデコを軽く小突いた。

「大丈夫だろ、お前なら。自分を信じとけ」

 最後に力いっぱいにあたしの背中を押す。

「ま、無理なら俺らが勝たせてもらうけどな」
「そ、それは許さん!」

 この競技は、普段SBで出場している人達が出て行う。
 まあ簡単に言えば、普段の6人組。そしてもちろん…。

 生徒会も一緒だ。

 思わず恐怖で体が震えるけど、直ぐに、行ってこい、とげん君とクラスの皆が言ってくれたので、あっちゃん達のいる所へ向かう。
 集合した場所に行けば、あっちゃんが笑顔で迎えてくれた。

「これに優勝すれば、SBで有利になる」

 火燐先輩がにやっと笑みを浮かべる。どうやら、これに優勝すれば、SBでの負けを回避する権利がもらえるらしい。つまり、最下位になってしまったとしても、それを1回ならやめることができる。なにそれ欲しい。

「これを狙ってくる委員会は多いよ。普段負けの多い、図書委員とか環境委員とかね。それに、いつも生活委員は生徒会に負けている…」

 そう言われて、皆でそれらのいる方を見る。確かに、殺気だっている。生徒会は余裕そうだ。

「けど、たとえ負けてしまっても、これはいい経験になると思うし、なにより思い出になると思うの」

 今度はにこっと笑って、火燐先輩が言う。

「周りは能力をバカスカ使ってくると思う。こちらも遠慮なしにやれ!! 特に生徒会にはね!」
「はいっ!」

 皆でそれぞれ返事をする。生徒会を強調するあたり、先輩はけっこいいい性格してる。と、思う。




《位置について…よーい…。》

 パァンッ!と今日一日で聞きなれた音が鳴り響き、選手が一斉にスタートする。
 男女比がバラバラなので、順番がかなりの鍵になってくる。けれど、それぞれ能力を使ったり、普段のSBの特訓もあってか、最初から接戦だ。これは、選手をうまく使う頭脳戦ともなる。
 私は4番目。アンカーが委員長なのは強制で、その前が副委員長。つまり、かなり責任重大なところ…だよね。うわあ、いやだ…。
 因みにアンカーは、他の人が100mなのに対して、グラウンドを一周する。凄いわー、本当。

 1番走者は輝先輩。体育委員では音雲先輩。生徒会は虎臣先輩。放送委員は紅煉君。
 皆最初からスタートダッシュを決めていたらしいから、かなりのスピード。そして、案の定というか…。

「行かせるかー!」
「おわっ! よくもやったな! 仕返しだ!」

 虎臣先輩が能力で地割れを起こせば、前を走っていた輝先輩が雷を落として、地割れがひどくなる。うわあ、これ、まだ第1走者だよね…。あたし、このグラウンド走れるのかな…。
 一緒に走ってる音雲先輩が可哀想に思えてくる…。それでも必死に上位で走ってるから、先輩もかなりの瞬足のようだ。

「南任せた!」
「頑張ります…!」

 輝先輩からあっちゃんに変わる。そして、体育委員はゆう君だ。
 ゆう君はどうしようという顔をしている。うん、好きな子だからね。攻撃するにもできないよね。

「よそ見してんじゃないよ!」
「うぎゃあっ!」

 後ろから攻撃を食らわせたのは朱理さんだ。朱理さんの炎による爆発で、ゆう君が一瞬宙に浮いた。
 なんとか着地したけど、その隙に朱理さんが抜かす。

「あっちゃんには悩んでたけど、アンタには遠慮はしないもんね!」

 ゆう君は自分の足に、軽い電気を走らせ、勢いよく地面を蹴った。
 なんか、スピードがかなり速くなってる…。どうやら、電気を体に走らせて、筋肉を刺激してるらしい。一緒の場所で待機してる火燐先輩が教えてくれた。

「それよりあっちゃん…」

 さっき走っていった彼女どこだろう、と探していれば、色々と騒いでるみんなのところを、ひょいひょいと交わしながら走っていた。
 成程……。

 そうこうしてるうちに、いつの間にか順番が近づいてることに気がつく。
 ふとあたしと一緒の列に並んでいる武関君と目があった。また彼と競うのか…。そう思うと少しゲンナリするが、ここは頑張らなければ。

 皆の応援も、今までのものとは比べ物にならないくらい、大きいものとなっていた。

 どの委員会も速くて、追い越したと思ったら追い越されたり、見ていてとても面白い。

 皆が騒いでいる中、冷静に走り抜けたあっちゃんは、生徒会の次にバトンをパスした。

「先輩、お願いします…!」
「うん、休んでて」

 彩兎先輩にバトンが渡り、彼が走り抜ける。流石陸上部、速い…!!

 次か…。軽くそわそわする。

 先輩と一緒に走ってるのはげん君と、これまた一緒の竜峰君。今日、この二人セット多いな。そして案の定めっちゃ競ってる。
 放送委員会も李奈さんが必死に走っている。

 他の人も横に立つ。男子の方が多いか…やっぱり、最後のほうだしな。
 そう思うけれど、今はまだあたしの委員会はリードしている。あたしがそこまで距離を縮まらないようにすれば…!

 そう思っていれば、先輩が走ってきた。
 順番的には竜峰君、先輩、げん君だ。そして一緒に走るのは、武関君と桜嵐先輩…。正直怖い。
 先に走ってきたからか、武関君はボソッと呟く。

「今年も負けだね」

 彼がボソッと呟いた言葉に、何かがブチッと切れた。

 バトンゾーンに入って相手を軽く見てから、足を動かす。



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