体育祭 後
そしてその後、げん君が次の人にパスをした。次の人も早いけど、その次はゆう君だ。
そして先に走った人が、ボールを投げつけた。有りか、有りなのかあれ。
「よっしゃあ!」
ゆう君が叫び走り続ける。ゆう君も素晴らしく早い。これ、また独走…。
《おっと! バスケ部独走かと思いきや、それを許さない3つの部があります!》
実況である、早緑先輩の妹さんである李奈先輩。その先輩の言う通り、追いつこうとしてるのは…。
《四天王と呼ばれている、弓道部の武関さんとサッカー部の虎臣さん! そして大本命の陸上部の飛騨水憐さん! 速い速い!》
こっちから見てても、その3人の気迫はかなりのものだった。(しかもそのうち2人は魔王だ)
これ、追いかけられてるゆう君からすればどれだけ恐怖なのだろう。
ゆう君は軽く叫びながら、スピードを速める。しかし後ろの3人が許さない。
「並んだ!」
思わず手に汗握る。
《4人譲らず! 100mを走り、次の人にバトンを渡しました!》
4人がそれぞれバトン(ボール2つと普通なバトン2つ)を渡す。
《バトンを渡された次の選手、そしてデッドヒートした4人は…いや、2人を除いて、勢い余って倒れました!》
武関君と水憐先輩はスーっと脇に避けたが、ゆう君と虎臣先輩は走ってきた勢いのまま、ズザア! と勢いよく転んだ。そしてそのまま倒れたままである。
《危ないですから立ってください。次の人が来ています》
疲れてるのか、転んで痛かったのか…。2人が動けない。
結局げん君と水憐先輩と武関君が引きずって移動させた。まあ何が言いたいかって、雑。まだ倒れたままだよ。
そして、そのあとは焔真先輩と彩兎先輩が走りきり、陸上部が一位でゴールした。最後の最後に少し距離を離されてしまった豪波先輩は、少し悔しそうだった。
いくら陸上部とは言え、運動部だらけの中で、ハンデありでよく勝てるなあ…。
そう思って周りを見れば、テニス部はボール打ちながらだったし、バドや卓球も似たか寄ったか。あぁ、確かに、そりゃ勝てるかもね。バスケ部とサッカー部は異常だったけど。あぁ、でもその2つは普段から慣れてるから行けるのか。
女子の運動部がスタートすると同時に、ゆう君達があたし達の方に向かってきた。
「凄かったね、勝てなかったけど。流石陸上部って感じだった」
「あー…今年こそいけると思ったのに…」
中等部の時でも、このような対抗リレーがあったらしいんだけど…。そっちでも勝ったことがなかったらしい。
がっくりとその場にしゃがみこむゆう君。そんなゆう君を、げん君が軽く蹴った。ちょっ、ちょっと扱い雑じゃない?
けど、彼が言うには、部費がかかってたのに…とのことだ。うん、お金がかかるとそうなっちゃうんだね。
ふと、今走っている運動部女子の方に目が移る。
今は火燐先輩が走ってるんだけど…。ぶっちゃけ火燐先輩の独走状態。もう先輩速いの何の…。
思わず皆で「うわあ…」と呟いてしまった。
女子の方も終わった様子で、案の定一位は陸上部。凄いね。
陸上部恐ろしい…。
そして部活対抗リレー文化部が始まる。因みに文化部は男女混合。ただし、男子のみは認められていない。半々だそうだ。
けど、大体の部活はパフォーマンス賞を狙っているようだけど。演劇部とか、演技しながらやってるし。因みに内容はアリスだった。
けれど、本気で走ってくる部活だっている。
軽音部、華道部、合唱部、美術部だ。
文化部は運動が苦手だとは思っちゃいけない。皆さん速いの何の…。
「輝先輩パス!」
「任せろ!」
紅煉君からアンカーである輝先輩にバトンが渡された。この二人はすごく速く、ほかの部活と大差が出てしまった…。と、思った瞬間。
「朱理ちゃんパス!」
千束先輩の声がした。そちらを向けば、バトンを受け取った、朱理さん…。
「怖っ!!」
思わずゆう君と声が被った。
先ほどのゆう君達も凄かったが、こちらも凄い。もう朱理さんの後ろから炎が出ているかのようだ。
輝先輩も殺気を感じたのか、振り向いてからヤバイ、という顔をした。
輝先輩は当然のように速いのだが、朱理さんがこれまた凄い速い。
男子に負けを引かないってそういうことなの…。
思わず皆であいた口がふさがらない。
そのままさっきのデッドヒートのようになり、二人は転がるように同時にゴールした。
もちろん、順位は1位だ。
《えっと、今のはどちらでしょう…!》
本当に、どっちになるんだか…。
すると、黄蘭先輩があっちゃんを手招きで呼んだ。
あっちゃんは素直にそちらの方に行き、黄蘭先輩があっちゃんに問いかける。その言葉を聞いて、彼女はこっそりと彼に耳打ちする。
その様子を見てたゆう君の衝動を止めるのに苦労した。
《どうやら、審査によると、1位は吹奏楽部のようです!》
よっしゃああ! と朱理さんの声が聞こえた。そして勢い余って千束先輩に抱きついている。そしてすぐにハッとして、慌てて離れるもんだから、後ろに転んだ。
「はははっ…! 先輩たち、ははっ…!!」
思わずお腹を抱えて笑う。
ゆう君も同じように笑っていた。
そしてパフォーマンス賞は演劇部だそうだ。流石、本気でやってるだけあった。
皆でワイワイとする中、それぞれがプログラムを開く。
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