体育祭 中



 お弁当に箸を伸ばし、おかずを口に運ぶ。

 とても美味しい。

 勿論お母さんの料理は美味しいけど、この人、げん君のも結構、というかかなり美味しい。
 これは、女子力以前の問題だ。やばい。
 あたしの料理は、特に美味しいというわけでもなく、不味いというわけでもなく、上手く言葉には表すことができない。らしい(ゆう君談)
 簡単には普通の味? これかなり辛いんだけど。

 黙々と食べ物を口に運んでいれば、十知君が苦笑いを浮かべる。それにつられてあたしも苦笑いだ。

「アリスちゃんのお弁当もうめー!」
「これは祖母が作ってくださったんです」
「へえ、おばあさんが」

 十知君からもらった唐揚げを食べながら、思わず言葉が出る。
 そういえば前にも少し話題が出てたような…。あぁ、おばあさんと時羽に少し関わりがある云々…だったかな。

「あっちゃんのおばあさんお料理上手だね…!」
「はい、私も真似しようとするんですがなかなか…」
「アリスちゃんの手作りも食べてみたいなあ」
「来世でよろしければ」
「来世!?」

 ぶふっと吹き出しそうになる。危ない危ない。
 げん君もかなり上手だもんね。これ女子としてのプライドズタズタだよ。

 じっとげん君のお弁当を眺めれば、げん君がそれに気づいて、まだ食うか? と差し出してくる。

 えっ? あ、いやいやいや。これはアレだよ。間接ゴニョゴニョになってしまう。

「い、いやいいよ! お腹いっぱいになったしね!」
「そうだよ。げんげんの弁当食べていいのは俺だけだから」
「それもどうかと思う」

 口をモゴモゴさせながらゆう君が言うので、軽くツッコミを入れた。
 最後まで取っておいたげん君作の唐揚げを食べる。めっちゃ美味しい。顔がにやける。

「幸せそうな顔しちゃってさ。妬けるわー」
「優羽キモイ」
「そろそろ俺泣くよ?」
「西野さん落ち込まないでください…」
「俺の味方は十知君だけだよ…」

 よよよ、と顔に手を当てて泣いたふりをする。

 ゆう君とげん君って、こうやって色々素直に暴言吐いたりしてるけど、何だかんだでお互いのことを信頼している。ゆう君と十知君は、先日のあっちゃんと十知君の事件後は、それほど問題もなく、今では(入学当時も普通に話してたみたいだけど)結構仲がよく、偶にバカして(9割ゆう君)騒いでる。そんな様子を見るのも、結構楽しくて好きです。
 それと同時に、男の子っていいなって思ったりもする。

 残りの弁当も完食し、皆でグラウンドへ向かうことにする。

「そうだ、委員会対抗リレーは絶対に負けないからね」
「いつもぼろぼろなお前が言ったって、説得力皆無だ」
「煩い! 俺はこれから巻き返すんだい! 何だよげんげんの意地悪…」

 ゆう君が軽く呟きながら歩いていれば、後ろから十知君が慰める。本当にこの二人はいいコンビだわー。
 そう思っていれば、あっちゃんに腕を軽く叩かれる。

「頑張りましょう」
「うん!」

 よし、まずは応援合戦からだ!



****



 応援合戦は、順番に軍ごとで発表していく。まず最初に校歌を歌い(叫ぶとも言う)次からは各軍自由にパフォーマンスする。
 最初の白軍、赤軍、黒軍が終わり、次は朱理さんたちの青軍だ。

「青軍さ、新選組のあの隊服着るんだよね」
「あー、そう言えば…」

 また、入場の時みたいなことするのかな。なんて心配になりながら、次に発表するあたし達は準備場所に立っておく。そしてその場所から応援を見ることになった。

 最初は色々な替え歌の応援歌とかをやって、少し準備時間にBGMを使い、そのあいだに応援リーダーはあの隊服を羽織った。
 朱理さんと竜峰君、結構似合ってる。ビックリするほどに。

 朱理さんポニテにしてるから、動くたびにその髪の毛が大きく揺れていつも以上に凛々しく見える。竜峰君は単純に似合ってる。
 火燐先輩も負けじと似合ってた。なんていうか、最強布陣の圧力を感じてしまう…。

「恐ろしい…」
「ホントにね」

 そう思いつつ、眺めていると、いつの間にか終わっていたようだ。


「赤軍行くぞぉぉ!!」
「おおぉぉぉ!!」

 応援団長である豪波先輩が叫ぶと同時に、待機場所から観客席に向かって皆で、わーとかうおーとか叫びながら走っていく。
 そして観客席の前につくと、皆で礼。
 ぱっと前を見れば。

 さっき借り者競争でお世話になったカップルさんがいた。


「うあぁぁぁ…」
「由希さん、戻ってきてください…。始まりますから…」

 先ほどの2人に見られているという羞恥心から、軽く唸っていれば、あっちゃんに肩を揺さぶられ何とか意識を戻す。
 こ、こうなればやけだ。やれるだけやってやろうじゃん! 彼女さんすごい満面の笑みだけど!!

 そう軽く生き込んで、あたし達の応援合戦が始まる。



 けど、応援合戦に替え歌の応援歌で、まるまるもりもりはどうかと思った。

 豪波先輩はどこを目指してるんだろう。




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