体育祭 中

 次々とみんなが行う中、続いてはげん君だ。そして見ると、竜峰君も同じ名簿なのか、一緒に横に並んでいる。
 げん君の表情もかなり険しい。まぁ、今までクラスメイトが引いてたモノを見ていれば、あんな顔になるのも無理はない。それに、さっきまでも追いかけられてる人も多かったわけだし。そんなあたしは、狙われるあっちゃんの手を取って逃げてたりしたんだけど。
 パアン! と合図がなって、一斉に走り出す。げん君も竜峰くんもかなりの速さで、くじ箱に向かった。そしてそれを引いて、げん君の顔が固まった。
 また変のなのに当たったかなあ…。

「……何じゃこりゃ」

 隣にいた竜峰くんも同じ反応をした。クラスの子達も、東堂固まってんぞ、とか言っているのがわかる。
 2人は思わず同時に顔を見合わせ、火花を散らした。
 この2人って、そういえばアレだったね。SBの時でもよく2人でバトルしてるから、軽いライバル関係なのだろうか。

 そう思っていると、2人は同時に走り出した。

「何でお前も同じ方向に来るんだ!?」
「うるせぇ! お前が付いて来てんじゃねぇのか!?」
「違げぇよ! どけ!」
「お前こそどけ!」

 げん君と竜峰くんは全く同じ方向に向かって走っていた。そりゃあもうお互いが平行で走るくらいですから。
 いや、けどたまたま同じ所に居るのかもしれない。
 そう思い込んで、げん君と竜峰くんはとある人のところまでたどり着いた。

 走ってきたので、少し息が荒い。小さく深呼吸をして息を整えて、相手を見て口を開き、腕を差し出す。

「ちょっと来てくれ」
「ちょっと来い」




「西野」
「北村」



 ………。

「え?」
「え?」

 あたしとゆう君が驚きで声をこぼした。
 そしてげん君はゆう君の前に移動する。

「お前は諦めな。別の人探すんだな」

 軽いドヤ顔のげん君。

「断る。コイツが俺のお題だからな」
「さっさと負けを認めるんだな」

 竜峰くんとげん君がお互い譲るまいと、火花を散らしながら睨み合っていると、げん君があたしの腕を掴んだ。
 その動作に、少しどきりとしたけど、すぐにハッとした。そうだった、早くしないと!

 げん君はあたしの手を掴んで、あたしを立たせる。
 あたしが少し慌てるように、走り出したげん君に引きずられるように走り出す。ちょっと足速いよげん君!
 チラリと後ろを振り返ってみれば、竜峰くんがすごい速さで走ってくる。うわあ、目がマジだ…。
 それに気づいたげん君の顔が軽く引きつり、スピードを上げる。

 なんとか逃げ切って、審査の人に紙を見せた。すると、彼女はニコリと笑みを浮かべた。

「OKです。じゃあ一着は赤軍と青軍の同時ですね」
「え!?」

 バッと振り向いてみれば、審査員のところで息を荒げている、竜峰くんとゆう君。ゆう君白目むいてない? 大丈夫?
 チッとげん君が舌打ちをした。かなりの迫力である。


「それで、お題は何だったの?」
「は?」

 げん君は驚いた表情をする。

 あ、あれ? ど、どうしよう。地雷踏んだ?

 あたしがやっぱり良いと言おうとすると、それと同時に、あたしの手に紙を押し付けた。


「これがお題だ。後で追求してくんじゃねぇぞ」

 げん君は少し眉間のしわを濃くして、先に戻っていった。
 ゆう君にお題はなんだったのかと聞けば、元気な同い年の運動部の男子だったんだそうだ。なんてピンポイント。

 チラリとさっき貰った紙を見てみる。

「……え?」

 バッとげん君の方に顔を向けた。

「ど、どういうことだよー…」
「ゆっきーどういう内容だったの?」
「貴様には教えぬ!」
「なぜに武士口調!?」

 



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