体育祭 中

「あ、そうだ! あっちゃんに見つけてもらえば!」

 急いであっちゃん達の方へ走る。
 あっちゃんの能力を少し借りて…。あれ? あっちゃんだけじゃなくて皆がいない。
 周りを見渡せば、げん君がゆう君とあっちゃんを抱えながら能力を使って逃げていた。なんだよおおお! 3人狙われてんのかよおおお!
 思わず紙を持ってる手をギュッと握る。グシャッと紙がなってるけど、気にしたら負けだ。
 畜生、こうなったら探しまくてやる。恥も捨ててやろう。

「誰かー! 観客の方でカップルいませんかー!」

 あたしが叫べば、ドッと笑いが起きた。くうう…! これは恥ずかしい!
 でも負けじと走り回ってみる。どこか、どこかに居るだろ! 居てー! お願いだから!
 あたしが必死で探していれば、どこかで声が聞こえた。

「ねぇねぇ! ボク達行ってあげようよ!」
「いや、でもな…」
「良いから!」

 そんな声がして、そちらを見れば、とある男の子が女の子に背中を押されて、少し前のめりになってあたしの前に一緒に出てきた。
 女の子は、パッと見れば、琥珀色のカールされた、ふわふわな髪の毛。緑色の瞳がとてもきれいだ。まぁ簡単に言えば、可愛い女の子なんだけど…。それで、髪の毛にお花をつけてる。これ本物なのかな…。
 そして男の人の方は…。

「ん?」

 どうも、似てる…。男の人は少し複雑な表情だ。
 少し男の人を見ていれば、女の子が口を開く。

「カップル探してるんでしょ? ボク達なら大丈夫だよ!」
「え、良いんですか?」
「勿論なんだぞ」

 グッと親指を立て、ウィンクをしながら彼女は言う。ボクっ娘だ。ってそれは置いといて…。

「お、お兄さんも大丈夫ですか…?」

 あたしが聞けば、彼は少し苦笑いをしながら答える。

「まぁ彼女がこう言うから、しょうがないよね」

 よ、良かったー! 
 あたしは頭を下げてお礼を言って、2人の手を掴んで走る。そして、チェックポイントのところの人に、紙と2人を見せる。

「……はい! 大丈夫です!」
「やったー!!」

 思わず万歳。このカップルの彼女さんも笑っている。

『おっと、1番手間取ってた赤軍が1位だな。どうやら内容は観客のカップル。ご協力ありがとうございましたー』

 狸珀先輩がそう言えば、彼女さんは満面の笑みで大きく腕を振ってた。
 そんなあたしは軽く苦笑いなんだけど…。もう一度お礼を言おうかと、男性の方を向けば、男性と目が合った。
 ……やっぱり、

「あの、今日はご兄弟の応援に…?」
「え? ……どうしてそう思うんだ?」

 あたしがそう聞けば、男性は緩く笑みを浮かべた。

「えっと、あたしの友人に似ていたので…」

 あたしがそう言えば、彼は一瞬ポカンとしたけど、直ぐにクスリと笑みをこぼした。

「バレるか…」
「え?」
「いや、なんでもないよ。君の友人の誰なのか分からないけど、そうだね。この学校にはきょうだいは居るよ」

 そんな会話をしていれば、どうやらあたしの番の借り者競争は終わったらしい。直ぐに次の人の番になる。
 あたしは慌ててもう一度二人の方を見る。

「えっと、ご協力ありがとうございました!」

 ペコリと頭を下げてから、急いで場所に戻る。
 場所に戻って、次の人に衣装を渡しておいた。すると、げん君たちもぜえはあと息を荒げながら戻ってきた。めっちゃ頑張ったんだ…。

「あ、ゆ、っきーおつつつつかれー」
「ゆう君大丈夫なの!?」

 めっちゃ、今にも死んでしまいそうだよ!
 あたしがそう叫べば、大丈夫だと親指を立てる。さっきの彼女さんのと比べると、かなり差のあるサインだ。
 あたしが何とも言えぬ表情をしていれば、げん君が口を開く。

「さっきの人達は、どういう関係で来てたんだ?」
「あー、この学校にきょうだいが居るからって…」

 あたしはチラリと、あっちゃんの方を見る。

「どうかしました?」

 あっちゃんが首をかしげた。

「え、あ、いや…。そういえばいないって言ってたよね…」

 あたしが呟けば、皆が首を傾げる。

「それでさ、ゆっきーの連れてったカップルの男の人、アレだね! あの人、えっと焔真先輩に似てたね!」
「あ? そうか? それより豪波先輩に似てると思ったが…」
「え? うそだ」

 シンと静まる空間。え、なんで皆思ってることバラバラなの…。焔真先輩と豪波先輩全然似てないし。てかあたしにはとてもその二人には見えなかったし。
 3人で一斉にあっちゃんの方を見る。あっちゃんは一瞬びっくりしたけど、申し訳なさそうに、耳に髪の毛をかける。

「すみません、私逃げるの必死で見ていなくて…」
「あ、いや大丈夫だよ!」

 おーい! 次東堂だぞー!
 向こうから声がして、げん君が反応する。そうか、もうそこまで行っちゃったか。てことは、ゆう君はその次で、あっちゃんは最後の方になるね。

「3人も頑張って!」

 ぐっと拳を握ってそう言えば、ゆう君は満面の笑みで首を縦に振り、あっちゃんも笑みで頷いた。げん君は軽く頷いて、あたしの頭をポンと叩く。
 そして、あたしは終わったから、後ろの方に並ぶんだけど…。
 もう一度、あっちゃんの方を見る。

「やっぱり、似てたよなあ…」

 あの人、あっちゃんに。



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