体育祭 前

 そのあとは先輩たちの短距離走だったんだけど…。
 これがまた凄くて…。

 まず、いつものお馴染みの先輩達は足が速いのなんの…。特に火燐先輩なんて、流石陸上部の短距離とリレー選手。素晴らしい走りだったよ。朱理さんも運動が得意なのか、短距離走ではぶっちぎりの1位。青軍怖いよー!!
 2年生では青軍がかなり早くて、青軍が1位をかっさらって行ったんだけど…。逆に3年では焔真先輩や彩兎先輩、豪波先輩がいてくれたおかげか、赤軍が1位をかっさらって行ってくれた。

「いやー、先輩が頼もしいと良いね」
「俺等のところは早緑先輩怖すぎて泣きかけたよ」

 ハハハッと乾いた笑みを浮かべる紅煉君。なんで彼と並んでいるのかといえば、お互い怪我をしたから、救護所に居ます。

「早緑先輩のヤンのところが出ちゃったみたいで…」
「そんな悟らないでよ…」

 確かに怖かったけど。
 ボソッと呟けば、ブフッと吹き出した声が聞こえた。まぁアレなんだけど、今私の手当をしてくれている千束先輩なんだけど。

「ごめんごめっ…! 二人の会話が面白くてつい…!」
「せんぱーい…」

 私が渋い顔をすれば、先輩はまた笑いながら謝る。

「面白がるのはいいけれど、早くしないと順番来ちゃうわよ?」
「あ、晴山先生…」

 笑みを浮かべながら来たのは、保険医の先生。晴山撫子先生。優しいと評判の、柔らかい雰囲気が特徴の先生だ。
 今まで私は保険室の先生がおばちゃんだったので、こうやって若い先生がいるのが珍しく感じだ。ていうか、漫画だけだと思ってたの、若い先生がいるのって。
 先生はテキパキと、紅煉君の腕の怪我の手当をしていく。

「ていうかどうしたの? その怪我」

 千束先輩に聞かれて、紅煉君は目をそらした。

「えっとですね、紅煉君が転んだのに巻き込まれまして」
「あそこにビニールテープが落ちてるのが悪い!」

 それ多分応援合戦用のものだよ。
 というツッコミは置いておいて、まぁ彼がそれに足をグネッとやって、たまたまその近くに立っていたあたしが巻き込まれたわけだ。
 私は転んだ際の擦り傷で済んだけど、彼は腕の怪我と足を捻らせている。

「しょうがないな…。ほら、捻ったところ出して」

 千束先輩が屈んで紅煉君の脚を差し出すように言うけど、晴山先生がそれを止めた。

「千束君これから競技でしょう? 疲れちゃうから止めときな?」
「え、でも…」
「大丈夫! これでも私は時羽の保険医だから!」

 先生はそう言うと、紅煉君の脚に触れる。

「いっつ!」
「少し我慢しててね…」

 先生が触れたところには、少し光が集まっていて、それが消えると、紅煉君の足から手を離す。

「これで大丈夫よ」
「え? あー! 本当だ!」

 紅煉君は足をぷらぷらと揺らして、大丈夫だということを表す。
 これって、あれだ。千束先輩と同じような能力だ。でも、見た感じ、先生の方が治る時間が早いように見える。
 それに、先生は疲れていないし。やっぱりキャリアの差、という感じなのかな。

「北村さんは大丈夫? 治すことも可能だけど」
「いえ! 大丈夫です!」

 私が手を横に振って答えれば、先生は笑みを浮かべて、なら良いけどと返す。

「じゃあ次は2年生の障害物リレーでしょ? 頑張ってね」
「はーい」

 千束先輩は気の抜けるような返事をして去っていく。
 あたし達も立ち上がって、お礼を述べてから救護所から離れる。

「晴山先生も異能者だったんだねー」
「そうだね。ていうか、時羽の先生の大体は異能者って話だけど」
「そうなんだ!?」

 知らなかったよ!
 それに引き換え紅煉君はずっと知ってるって感じだ。

「紅煉君っていつからこの学校にいる?」
「え? んー、確か小学の入学からかな」
「なっが!」
「早緑先輩もそうだし、奏架もそうだったかな」

 放送委員は皆同じ時期…。

「あ、でも李奈先輩…あ、早緑先輩の妹さんね。その人は確か高校から? だったかな?」
「へぇ…」

 前に会長さんが言っていた先輩か。その先輩にはまだ会ったことないし、そのうち会えるのかな。いや、嫌でも会うか…SBでさ…。
 少しげんなりしていれば、あっちゃん達があたしに気づいて小走りでやってくる。

「由希さん大丈夫ですか?」
「大丈夫だよー」
「狐紀君め! 嫁入り前のゆっきーをよく怪我させてくれたな!」
「お前はあたしの父親か!」
「すみませんでしたお義父さん!」
「止めろ!!」




 / →





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -