君だけは知っている

「えっと、じゃあ応援リーダーの紹介でもすっか!」

 団長である豪波先輩がそう言えば、各学年の応援リーダーが自己紹介していく。私の学年は2人。2年生は4人。3年生は8人だ。凄いなあ…。
 まぁ、あたしたちの応援リーダーはいわずもかな、ゆう君とげん君であって…。他の学年のリーダーは知らない人ばかりだ…。皆の紹介が終わったあと、応援団長である豪波先輩が口を開く。

「えっと、俺が応援団長の海影豪波です。頼りねーかもしんねーけど、体育祭に向けて頑張ろうな」

 豪波先輩がそう言って笑みを浮かべれば、偶々隣に居た水憐先輩が溜息を吐いた。

「水憐先輩?」
「いえ、何でもありませんよ。ただ、あの人はもう少し、自信を持っても良いと思うんですけどね…」

 豪波先輩が色々話ししてるけど、水憐先輩の言葉を聞いていたら、あまり聞こえていなかった。
 水憐先輩の表情は、少し切なそうでもあって、なんか、やっぱり目に見えない何かの繋がりがあるんだろうなって。
 SBとか見てると、火燐先輩の方は、皆が一列に並んでる感じに見える。だけど、水憐先輩の方は、水憐先輩を先頭に、他の先輩方が数歩後ろで一列に並んでいるような、そんな雰囲気がした。
 それは、ただ水憐先輩が前を歩いてるだけかと思ったけど、他の先輩方が進んでそうしてる感じだった。普段は普通に仲の良い家族、って感じがするのに、それが並んでみると、先輩方は少し後ろを行く。
 それが良いのかもしれないけど、でも火燐先輩たちを見たあとだと、どうも不思議な感じだ。

「水憐先輩は、豪波先輩が好きですか?」
「は?」

 一瞬先輩の顔が歪んだ。
 ……あ、これじゃあ同性愛者ですかって意味で取られるのかもしれない。

「そ、そういう意味ではなくて! 豪波先輩をはじめとして、音雲先輩と桜嵐先輩のことが、好きですかと…」

 あたしが少し苦し紛れにそう問えば、先輩は暫くあたしを見てから、小さく息を吐いた。

「相変わらず、人を観察するのが得意ですね…」
「す、すみませんっ!」
「いえ、責めてるわけではないです。それは立派な長所ですからね」

 えっと、これは褒められてるのかな…。
 少しドキドキしていれば、先輩は少し顔を逸した。

「嫌いな人と、一緒に過ごせるほど、僕は寛大ではないですよ」

 それが、態度で出せるかと言われれば、別ですけど。

 先輩はそう言って、豪波先輩の方に歩いて行った。

 ……。

「ツンデレってやつなのかな…」
「何が?」
「うわあっ! ってゆう君か。びっくりした」
「ビックしたも何もないよ。ゆっきー全然話聞いてなかったでしょ」
「す、すみません…」

 あたしが思わず謝れば、別にいいけどさと笑顔で許してくれた。

「なんか、各自で出る種目を、よく考えていてねって話だよ」
「種目かぁ…」

 何があるんだろう。
 そんなあたしの考えなんかお見通しなのか、ゆう君は種目を教えてくれた。

「えっとね、1年生全員種目は、50m走と借りもの競争ね」
「定番だね」
「そうそう。因みに2年生は障害物リレー、3年生はタイヤ取りだよ」

 定番だなー…。でも定番だからこそ、盛り上がったりするんだろうけど。

「それで、騎馬戦、軍対抗リレー、綱引きのどれか一つは出なきゃいけないよ」
「へぇ…」
「ゆっきーは騎馬戦かリレーだろうね」

 ゆう君が笑顔でそう言うけど、正直少し微妙だ。だって騎馬戦はいつも下になるし、まぁしょうがないんだけど…。
 リレーも、まぁ走るのは得意の方だから、よく出てたけど…。少し微妙だなあ。

「どうしようかなー…」
「由希さん」
「あ、あっちゃん」

 少し距離が離れたところから、あっちゃんが小走りで向かってきた。
 そんな彼女の後ろには、彩兎先輩と焔真先輩。

「由希さんって、50m走って何秒でしたっけ?」
「えっと、確か7,88だったかな」

 あたしがそう言えば、彩兎先輩が「早いね」と言ってくれた。陸上部にそう言っていただけるのは、結構嬉しかったり…。

「これは悩むねー。騎馬戦に出てもらうか、リレーに出てもらうか」

 あたしもどうしようかなって、思ってたんだけど…。でもこの学校は、足の速い人結構居そうだよね…。
 そう思っていれば、焔真先輩が口を開いた。

「高校の騎馬戦は、でかい奴が下とは限らないぞ」
「え?」

 どういうこと? と思っていれば、焔真先輩が続ける。

「騎馬戦はでかいほうが有利だからな。だから、前とそこまで大差ないやつを下にして、お前を上にすると思う」

 焔真先輩がそう言えば、彩兎先輩が軽く肩をすくめた。

「なぁに? もしかして、いつも騎馬戦が下だったから、騎馬戦嫌だったの?」
「うっ、その通りです…」

 あたしが思わずそう言えば、彩兎先輩は軽く呆れた顔をした。

「そんな。170cmなんて良いじゃん。スタイル良く見えるし。何より、僕たちより小さいんだから。気にしなくても」
「本人にとっては、コンプレックスなんだろ。あまり言うな」
「はいはい。でも騎馬戦の上になったら、凄い強い騎馬になりそうだよね」

 確かに。と周りの人も頷く。
 あれ、これは軽く決定事項な感じ?

「……じゃあ、騎馬戦で…」
「おっけー! じゃあ豪波先輩に言ってくるよ!」

 ゆう君はそう言うと、駆け足で豪波先輩の方に向かっていった。
 それを見て、彩兎先輩と焔真先輩も、3年生の方に戻っていく。

「あっちゃんはどうする?」
「あたしは、綱引きだそうです」

 騎馬戦は向いていないので。とあっちゃんが苦笑いを浮かべる。確かに、騎馬の上に乗って、ハチマキを取ろうとするあっちゃんは、あまり想像がつかない…。

「じゃあお互い頑張ろうね」
「そうですね」

 あっちゃんは笑みを浮かべながら、手に持っていた何かをポケットに入れた。

「ん? 何か持ってたの?」
「え、あぁこれです」

 そう言って見せてくれたのは、少し長い…リボン? 綺麗な色の、黒っぽい茶色みたいな…。普通な色な感じなのに、なんか陶芸品みたいな、少し不思議な感じがした。

「リボンだよね? これは?」
「これは、この学校と時羽依頼所の研究部の、共同研究によるものです。これを試作品として、渡されたんです」
「な、なんか凄いね…」

 そうでもないですよ。と笑みを浮かべながら、彼女は言う。

「空木先輩や早緑先輩。他にも渡されている人はいるそうですよ」
「へぇ…」

 思わず焔真先輩の方を見る。
 なんか、色々と知り始めたけど、知らないことも多いんだなあ…。

「ま、それよりまずは体育祭だよね」
「そうですね」

 時羽三大祭りの一つらしいし! 思いっきり楽しめたら良いな。



――――――

軍分けのまとめ↓

赤⇒(1年)彩鈴・由希・優羽・源輝・十知(2年)水憐・音雲(3年)焔真・彩兎・豪波
青⇒(1年)青也・玄眞(2年)朱理・火燐・輝・紋(3年)紫恩
白⇒(1年)奏架(2年)白夜(3年)黄蘭
黒⇒(1年)狐紀(2年)李奈(3年)桜嵐・狸珀


あみだくじのフリーソフトでやったら、めちゃくちゃバランス悪かったですね…。申し訳ないです…。


 / →





×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -