すばらしい春の日のこと

「北村ちゃんって、転校生だよね」
「はい、本当は別の学校に進学予定だったんです」
「だったら今回の授業選択、辛いよねー」

 学校に入ってまだ2ヶ月くらいなのにね。
 なんて言われて、思わず安心した。なんか、あたしの考えが分かってくれる人がいた、みたいな安心感。
 少し感動していれば、彼は続けて話を続ける。

「でもまぁ、決まりは決まりだもんねー…。何か候補ってあったりする?」
「どうなんだろう…。普通科が、一番無難かなって思ったんですけど…」

 でも、普通科を選んだら、この先あたしは何を目指す? 自分が異能者というものを受け入れたとしても、他の人が同じように受け入れるとは分からない。

「うーん、そうだね。普通科が一番無難で、今現在悩んでる人は大抵そこに入る」

 普通科に入れば、進路は就職や専門学校、時羽の系列の大学や、他の大学。色々選べるっちゃあ選べる。

「でも異能者で入ってる子は、あまり居ないんだ」

 一番希望者が多い学科なのにね。と彼が笑いながら言う。

「そうだな、早緑の妹ちゃんが普通科に入っているよ」
「あ、先輩に妹さん居るんですね」
「うん、似てるんだわそれが。で、彼女も途中で能力目覚めた子だから、高校になってから転校してきたんだよ」

 じゃあ、今のところ知っている、高校に入ってからの転校生は、千束先輩と早緑先輩の妹さん。先輩だろうけど。名前知らないので、申し訳ないけど。
 妹さんの能力は、変身らしい。なので、この先使うこともあまりないし、意思してするわけでもないので、普通の人と変わらないんだそうだ。だから、自分の道をもっと考えてから決めたい、ということで普通科を選んだ。
 そう聞いて、あたしはもっと悩み始めた。
 悩んでいれば、会長は「話は変わるけど」と話題を振る。

「北村ちゃんの能力は、どっちかって言うと主幹タイプだよね」
「え?」
「ほら、簡単に言えば、南ちゃんは表で活躍するような能力ではないでしょ? それは補佐型」

 他にも、西野君は主幹、東堂君は補佐。飛騨姉弟は主幹、空木君と海影君は双子の能力が必要だから、補佐型。

「という感じかな」

 そう言われてみれば、確かにそうだ。彩兎先輩も、どっちかって言うと補佐型なんだろうか。それで、輝先輩は主幹? 音雲先輩は補佐で、桜嵐先輩も補佐かな?
 あたしがそう呟けば、会長さんに正解と言われる。

「でも日暮君は性格的に補佐寄りだよね」

 あははっと笑いながら先輩は言う。

「ほら、合宿の時に最初に別れなかった?」
「あ、そういえば」

 一人で寂しいよー! とか思ってた記憶がある。

「あれは、能力の使えない一般の人、それに今の補佐型と主幹型を分けていたんだよ」
「そうだったんですか」

 今更理解した。ということは、十知君も補佐型だったのか。

「まぁ、能力の他にもその子の性格も関係したりするんだけど…」

 北村ちゃんはどうあがいても、能力的に主幹だね。
 なんて言われて、思わず渋い顔になってしまった。だって、それってつまり頑張らないいけない立場じゃね? なんて…。
 そう思っていれば、先輩は少し真剣な表情をする。

「こうやって分けたわけだけど、主幹型の能力の子は、色々大変なんだ」
「え、どう言う意味で…?」
「勿論、補佐型の子もいろいろ大変だよ? 特に南ちゃんや東堂君なんて、色々活用法だってあるわけだし」

 どういうことだろう、と疑問に持っていれば、直ぐに話を元に戻される。

「少し酷い言い方をしてしまうかもしれないけど、主幹型の子達は、別名攻撃型って言われたりする」

 意味は分かるよね?
 そう言われて、思わず過去の出来事を思い出す。
 ゆう君は電気を帯びて、相手にその電気をぶつけている。火燐先輩は炎で戦っていて、水憐先輩のは見たことはないけれど、考えた感じだと火燐先輩と似たようなものなのだろう。輝先輩だって、雷を相手に落としていた。
 そしてあたしは…。

 前にあっちゃんと出会った時に、能力を相手にぶつけている。

「あ…」
「理解した?」

 あたしはコクリと頭を縦に振った。
 要は、武器の様なものだ。攻撃をする為の能力。

「だから進路的にも、狭まっちゃったりするんだよねー」

 彼は少し気まずそうに、頭を掻いている。
 会長さんの所為ではないだろうに。そう思っていれば、彼は話を続ける。

「だから、オレはこうやって皆が幸せに暮らせるのを、祈りながら生活してるんだ」

 なんか、大きな夢だなあ。なんか、会長さんって…。

「なんか大人っぽいですね」
「え、何それ。さっきのジジくさいと連携してる?」
「いえ、そういうわけでは…」

 ない、とは言い切れないけど。
 少し目線を外していれば、先輩は少しむくれた表情をする。そういうところは、少し幼く見えるんだけどね。不思議な人だなあ。


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