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真っ赤な鳥人間が炎を吐き、屈強な男がその首を締め上げる
目の前で起こっている非日常の戦いを見つめ、おじいちゃんが語る悪霊の正体を聞きつつ私は思った
めちゃくちゃ暑い、と
いやね、お兄ちゃんが大怪我しないかとか心配だしはらはらするけどね!それよりめちゃくちゃ暑いんだよここ!あとスタンドが私のオカルト脳を刺激すぎて大興奮してます。顔には出さないけど。雰囲気を壊すわけには、いかない!
だから周りをよく見てなかった私は、無事お兄ちゃんが牢屋から出たとき自分の本が炎で焼け焦げトイレの水でびしょびしょになっているのを発見したとき思わず叫んだ
「ガッデム!!!!」
本を拾い上げ叫ぶ私にお兄ちゃんはやれやれだぜと言った。やれやれなのはこっちだよ!
「うわーもうこれ結構高かったのに…!」
お兄ちゃんに弁償させ…無理だね買ってくれるわけないじゃあないか!
「はぁ…」
「すまない、咲子。私があとで弁償しよう」
「アヴドゥルさん…!それはありがたいですけど、これかなり探したんでそんじょそこらじゃ売ってないんですよ…」
ああもう、ぱぱっと直ったりしないかなぁ…
そう思ったときだった
「こ、これは!」
「こいつはまさか!」
「ああ、どうやらこれが咲子の…!」
「へ?私がな、に……」
それは大きな杖を持ったシスターだった
その顔は美しい笑顔を浮かべ、不釣り合いなほど大きな杖には水晶のような石が嵌め込まれていた
そして彼女は口を開いた
<私の力を使いなさい>
「…は、え?」
<その本を直したいのでしょう?なら私の力を使いなさい。その本に起こった事象をなかったことにするのです>
その本が持つ情報をキーワードに、力を発動させるのです
そうすれば、叶います
「や、やや…やってみる!
えと…【私】が【所持していた】【本】の【焼けたという事象】と【濡れたという事象】を、なかったことに!」
瞬間、本はまるで最初からそうであったかのように綺麗な状態に戻っていた。焼けた跡もなく、濡れている部分もない
「や、やった!!」
「これは凄いの…」
「起こったことをなかったことにするとは…」
みんなが驚くなか、その現象を起こしたシスターはすっと私の中に消えた
ああ、もうだめ、限界よ。この衝動は抑えられない!
「………〜〜ッ」
「咲子、今のがお前のスタンド…咲子?」
「神様ありがとうッ!!!!」
「!?」
「こんな面白くて不思議な物と出会えるなんて!!!私は今!!!最高にハイよ!!!!いやっほーい!!!!!!」
「喧しい!!」
「あだッ!!!」
そのあと私は合計5回もお兄ちゃんに殴られ、ようやく落ち着くのだった
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